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2017 年度 実績報告書

細胞壁再生イメージング解析法による細胞壁ネットワーク構築メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17J01427
研究機関東北大学

研究代表者

九鬼 寛明  東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2019-03-31
キーワード細胞壁 / セルロース微繊維 / キシログルカン / 画像解析 / プロトプラスト / シロイヌナズナ / 一過的過剰発現 / 免疫蛍光抗体染色
研究実績の概要

これまでの研究で確立した、プロトプラストからの細胞壁再生過程を共焦点イメージングと画像解析によって定量的に解析する手法についての研究成果を論文にまとめた。次に、この手法を用いて細胞壁の新規構築に関わる因子の逆遺伝学的スクリーニングと、細胞壁関連遺伝子の一過的過剰発現による標的遺伝子の機能解析を試みた。そのの結果、細胞壁の主骨格であるセルロースネットワークの構築が遅延する2種類の突然変異体としてxyloglucan xylosyltransferase 1/2 (xxt1xxt2)とchitinase-like1 (ctl1)を同定した。これらの突然変異体のうちxxt1xxt2 では、キシログルカンが含まれないことが免疫蛍光抗体染色によって確かめられ、さらに形成されたネットワークのパターンも異なることがわかった。現在、原子間力顕微鏡や電子顕微鏡などを用いたナノメートルスケールのイメージングにより、野生型とxxt1xxt2プロトプラストから再生した細胞壁再生パターンの違いをより詳細に解析しようと試みている。これらの研究により、セルロースネットワーク構築におけるキシログルカンの機能を明らかにできるものと期待している。
標的遺伝子の一過的過剰発現については、まず核局在性のYellow-fluorescent protein (YFP-NLS)をポリエチレングリコール法でプロトプラストに導入し蛍光を確認した。その結果、約60%のプロトプラストに遺伝子を導入することができた。続いてセルロース合成酵素であるCESA1、セルロース合成関連遺伝子であるKORRIGAN 1、セルロース分解酵素であるCELLULASE 3を過剰発現させたが、これらの遺伝子の過剰発現は細胞壁再生に有意な影響を与えなかった。現在、影響が出ることが期待される他の遺伝子の解析を検討中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の当面の目的は、自ら確立したプロトプラストからの細胞壁再生過程を定量的に解析する手法を用いて、細胞壁の新規構築に関わる因子を同定することであった。細胞壁の新規構築に関わる因子の逆遺伝学的スクリーニングによって、セルロースネットワークの構築が遅延する2種類の突然変異体として xxt1xxt2とctl1を同定することができたことで、目的は達成できたと言える。現在進めているxxt1xxt2の詳しい解析では、キシログルカンを添加した培地でxxt1xxt2プロトプラストを培養したときにセルロースネットワークパターンの変化が認められている。この結果は、キシログルカンが細胞壁の機械的性質に重要な役割を果たすセルロースネットワークを形成するうえで重要であることを示す根拠となる可能性がある。この点において、本研究の進捗状況は順調である。一方で、プロトプラストに標的遺伝子を過剰発現させる実験系については、検証を重ねているものの、安定した実験条件の確立や標的遺伝子の選定がまだ不完全である。総合的に見て、本研究は概ね順調に進んでいると考えられる。

今後の研究の推進方策

細胞壁構築に影響を与える因子の逆遺伝学的スクリーニングによってxxt1xxt2が同定されたことで、セルロースネットワーク構築時におけるキシログルカンの役割を解明する糸口が見出された。また、xxt1xxt2プロトプラストをキシログルカン添加培地で培養すると、再生したネットワークパターンが、少なくとも蛍光イメージングレベルにおいて変化することもわかった。しかし、太さ約3.5nmであるセルロース微繊維やそれが束化したセルロースフィブリル構造のネットワークパターンを詳細に解析するためには、これまで用いてきた蛍光イメージングよりも分解能の高い手法が必要である。そこで今後の研究で、細胞壁ネットワークをナノメートルスケールで可視化できる電子顕微鏡や原子間力顕微鏡によるイメージングを導入しようと考えている。これらの手法を用い、野生型とキシログルカンを持たないxxt1xxt2との間で見られるセルロースネットワークのパターンの違いや、人為的にキシログルカンを添加した際のネットワークパターンの変化を解析し、それに加えて形成されたネットワーク構造の物理的性質を原子間力顕微鏡で計測することで、細胞壁が機械的強度を制御するうえでキシログルカンが果たす役割を明らかにできると期待される。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Quantitative confocal imaging method for analyzing cellulose dynamics during cell wall regeneration in Arabidopsis mesophyll protoplasts2017

    • 著者名/発表者名
      Kuki Hiroaki、Higaki Takumi、Yokoyama Ryusuke、Kuroha Takeshi、Shinohara Naoki、Hasezawa Seiichiro、Nishitani Kazuhiko
    • 雑誌名

      Plant Direct

      巻: 1 ページ: e00021~e00021

    • DOI

      10.1002/pld3.21

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 細胞壁イメージングと新規の酵素機能の解析に基づく新しい細胞壁高次構造モデルの提案2017

    • 著者名/発表者名
      九鬼寛明,桧垣匠,篠原直貴,横山隆亮,黒羽剛,三上慎吾,馳澤盛一郎,西谷和彦
    • 学会等名
      日本植物学会第81回大会
  • [学会発表] Cell Wall-Related Gene Families in Land Plants2017

    • 著者名/発表者名
      Yokoyama R., Kuroha T., Kuki H., Shinohara N., Mikami S., Nishitani K.
    • 学会等名
      第65回NIBBコンファレンス
  • [学会発表] Quantitative Imaging Approaches to Mechanisms of Cell Wall Construction Using Arabidopsis Mesophyll Protoplasts2017

    • 著者名/発表者名
      Kuki H., Higaki T., Yokoyama R., Kuroha T, Hasezawa S., Nishitani K.
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Plant Biology 2017
    • 国際学会
  • [備考] 新学術領域研究 植物細胞壁の情報処理システム

    • URL

      https://www.plantcellwall.jp/research/index.php?y=2017#/basic

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公開日: 2018-12-17  

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