研究実績の概要 |
本研究では、コアーシェル構造体のゼオライト触媒をベースにさまざまな活性点を付与することで、高選択的な物質変換を目指すことを目的としている。本年度は、その付与する活性点の開発を中心に研究を行った。特に、ゼオライトの固体酸性質の制御を行った。ゼオライトの固体酸性質を制御するための具体的なアプローチとして、酸点の発現に大きく寄与する元素を他の元素での置換を行った。 まず、SiとAlで構成される最も一般なゼオライトであるアルミノシリケートでは、3価のAlが酸点の発現に大きく寄与するので、3価の異種元素であるFeによる置換を行った。Feに置換することで、ゼオライトの酸強度が弱くなることを見出した。中程度の細孔の大きさを有するMFI型および大細孔を有するBEA*型ゼオライトに対して、Feで置換することに成功し、弱酸化を確認した。そして、そのFeで置換したMFI型ゼオライトは、メタノールから低級オレフィンを合成するMethanol to Olefins (MTO)反応において、エチレンい比べてプロピレンが選択的生成することが分かった。また、Feで置換したBEA*型ゼオライトでは、アセトンから低級オレフィンを合成するAcetone to Olefins (ATO)反応において、高いイソブテン収率を示すことが明らかになった。 続いて、Si, Al, PからなるSAPO系ゼオライトにも同様のストラテジーで酸強度の制御を試みた。SAPO系のゼオライトでは4価のSiが酸点の発現に大きく寄与するので、そのSiを同様の4価のGeで置換したGeAPO型ゼオライトを開催した。このGeAPO型ゼオライトはSAPO型ゼオライトに比べて、酸強度が弱いことが確認された。このGeAPO系ゼオライトの合成は小細孔のAEI型において成功した。GeAPO型ゼオライトは、MTO反応において、寿命が向上することが見出された。
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