研究課題/領域番号 |
17J01571
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤井 伽奈 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | Modular design / Product architecture / Design structure matrix / Customer needs |
研究実績の概要 |
顧客ニーズ間の相関関係をモジュール化設計に反映させることができれば,顧客ニーズにより迅速かつ柔軟に対応した製品提供の実現が期待できる.そこで本研究はデータマイニングによる顧客情報のビッグデータ解析を組み込むことにより,顧客ニーズ・技術的実現可能性・経済的合理性を統合的に考慮してモジュール化設計を行うプロダクトデザイン手法を構築することを目的としていた.上記研究目的達成のために本年度の研究では,産業用三軸直交ロボットを対象として,製品の仕様書に対して相関ルール分析を適用し,顧客ニーズ間の相関ルールを抽出するとともに,その信頼性を吟味して有効な相関ルールを採用する枠組みを構築した.具体的には,相関ルールを個別受注型の製品のモジュール化設計の用途に適した形式で抽出するために,量的変数を含めた相関ルールを抽出する解析方法を実装した.また顧客ニーズ間の相関ルールと,製品の物理機能間および実体構造における部品間の依存関係を入力情報として数理的にモジュール化を行うためのDesign Structure Matrixの操作方法と計算処理を数値プログラムとして実装し,顧客ニーズ間の相関ルールを製品の技術的実現可能性と経済的合理性と合わせて統合的に考慮するモジュール化設計手法を構築した.上記により構築した手法を産業用三軸直交ロボットに適用してモジュール化設計を行いその効果を検証した. 上記によって得られたモジュール化設計の枠組み構築についての知見の一部をまとめた論文がJournal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturingに掲載されたほか,日本機械学会第27回設計工学・システム部門講演会にて発表した.また上記成果についてまとめた日本機械学会論文集に投稿予定の論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画にて当初計画をしていた,産業用三軸直交ロボットを対象として製品の仕様書に対して相関ルール分析を適用し,顧客ニーズ間の相関ルールを抽出するための枠組みの構築と,その実装を達成することができた.また,当初計画していた顧客ニーズ間の相関ルールを製品の技術的実現可能性と経済的合理性とを併せて統合的に考慮するモジュール化設計手法の構築とその効果の検証を,製品の物理機能間および実体構造における部品間の依存関係を記述したDesign Structure Matrixの操作方法と計算処理を数値プログラムとして実装し,産業用三軸直交ロボットに上記により構築した手法を適用してモジュール化設計を行うことで達成することができた.当初の計画では,上記から得られた知見を集約し,日本機械学会設計工学・システム部門講演会等の国内学会や,国際学会で報告するとともに,論文として成果をまとめ,Research in Engineering Designおよび日本機械学会論文集に投稿することを予定していた.これに対して,上記の研究成果を日本機械学会第27回設計工学・システム部門講演会にて発表したほか,投稿誌は予定から変更されたが,成果をまとめた論文を国際誌であるJournal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturingに投稿して掲載された.さらに,日本機械学会論文集に投稿予定の論文も執筆中である.以上のように,報告者は細部の変更は生じたものの当初の研究実施計画にそって研究を進めることができており,おおむね順調に研究が進展したといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究において構築したモジュール化設計手法を産業用三軸直交ロボットへ適用することにより得られるモジュール化設計の結果について,当該ロボットの設計担当者からのレビューを受け,フレームワークの洗練化に取り組む.さらに,手法の汎用化を目指し,ここまでに構築してきたモジュール化設計のためのプロダクトデザイン手法を産業用ロボット以外のいくつかの性質の異なる製品,具体的には,産業用製品に限らず機能がシンプルでありながらより多数のユーザに使用される民生用製品にも適用していく.対象とする民生用製品としては,家庭用空調機を予定している. 民生用製品は,産業用製品と比較すると対応する顧客ニーズは少なく,生産量が多い製品である.このため,産業用製品よりもコストや生産性が重視される.そこで,平成29年度の研究において構築したモジュール設計手法の拡張においては,製品のコストや生産性を考慮してモジュール化を行うために,製品のニーズ間・機能間・部品間の関係の記述方式や,モジュール化において考慮すべき評価指標の構築を行う.評価指標の構築に際しては,対象製品の製造企業とディスカッションを行って,現在の製品生産方式等を考慮しながら進めていく. 上記の新たな機能間・部品間の関係や評価指標を導入してモジュール化を行うためのDesign Structure Matrixの操作方法と計算処理を検討し,平成29年度において開発したモジュール化設計のための数値計算プログラムをベースにして上記手法を実装する. 以上により構築される手法を,家庭用空調機に適用し,モジュール化設計を行うことでその効果の検証を十分に行う.適用結果に対し当該製品の製造企業からレビューを受け,必要に応じて,製品のニーズ間・機能間・部品間の記述方式や,評価指標の再検討や改良を行う.
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