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2017 年度 実績報告書

ゲノム・エピゲノム新規統合解析によるナルコレプシー遺伝要因の探索と発症機序の検討

研究課題

研究課題/領域番号 17J01616
研究機関公益財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

杉本(嶋多) 美穂子  公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワードナルコレプシー / DNAメチル化 / 視床下部
研究実績の概要

2017年度の年次計画では、ナルコレプシー患者および健常者の血液、並びに死後脳由来のゲノムを用いたゲノムワイドメチル化解析を実施することとしていた。
ナルコレプシー患者26名、健常者20名を対象として末梢血から抽出したDNAを用いて、HumanMethylation 27K アレイにて網羅的なメチル化解析を実施した。年齢、性別、喫煙、白血球サブタイプの影響を考慮した回帰分析を実施し、疾患に関連するメチル化部位を探索した。疾患との関連を統計的確率とエフェクトサイズに基づき評価したところ、疾患との関連が強い上位100メチル化部位はCpGアイランド外の領域に有意に多く(P <7.32×10-19)、その95%以上が患者群で高メチル化されているという結果を得た。さらに、これらの領域に存在する遺伝子群を用いたパスウェイ解析では、モノカルボン酸の代謝に関わる遺伝子セットとの関連が認められた。さらにGWASデータとの統合的な解析を試みた。解析には、SNPの遺伝子型とメチル化率に相関がみられる部位meQTL(methylation Quantitative Trait Locus)の情報を応用した。その結果、CCR3(Chemokine Receptor 3)領域のSNPとメチル化の関連が疾患発症に寄与する可能性があるという結果を得た。
さらに細胞や組織でメチル化の状態が異なることから、脳組織におけるメチル化解析も実施した。脳の切片サンプルから後部視床下部領域の切り出し、ホルマリン固定による架橋構造を壊してゲノムを抽出するプロトコルを採用することで、DNA抽出に成功した。側頭葉皮質についても該当部位からDNAを抽出し、それらサンプルを用いて予定通りゲノムワイドなメチル化の実験を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画では、血液(免疫細胞)や脳組織など、ナルコレプシーの発症機序に関わるとされる複数の組織におけるDNAメチル化の情報やゲノムワイド関連解析(GWAS)の情報を統合的に解析することによって、疾患の発症に関わる因子を同定し、発症機序の解明につなげることを目的としている。はじめに血液から抽出したDNAを用いた網羅的メチル化解析を実施した。患者・健常者群のメチル化状態を比較し、血液において疾患に関連する可能性のあるDNAメチル化部位を特定しただけでなく、GWASデータとの統合的な解析も実施した。その方法論としては、研究を始める段階ではいくつかの候補があったが、その中で最も適切と思われる手法、すなわちmeQTL(methylation Quantitative Trait Locus)の情報を用いた統合的解析の方法論を確立することができた。この統合的解析手法を用いることでCCR3領域のSNPとメチル化が疾患の発症に寄与する可能性を明らかにした。さらに、2017年度は脳の網羅的メチル化データの収集を完了させることも目標として研究を実施した。脳のメチル化解析を実施するにあたっては、想定外に脳組織からDNAを抽出するのに困難があった。一部のサンプルでは保存状態や死因の影響でDNAが完全に分解してしまっていたためと考えられる。そのため、網羅的メチル化解析に必要な量のDNAを抽出することに時間を要したものの、最終的には実験まで終了させることができた。以上により本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

今後は2017年度に得た脳組織(後部視床下部ならびに側頭葉皮質)の網羅的なメチル化データを用いて、それぞれの脳部位でナルコレプシーに関連するDNAメチル化部位を特定する。なお、そのような解析を実施する際には、脳を構成する細胞の種類やその比率について考慮することが必須であると考えられるため、2017年に論文発表された最新の手法であるMeDeComという方法を用いて、網羅的メチル化データからの細胞構成比の推定を実施する予定である。さらに、ナルコレプシーにおいてオレキシン神経の脱落が起こっている後部視床下部と側頭葉皮質の疾患関連メチル化部位の違いなどについても検討を実施する。
本研究では脳の網羅的DNAメチル化データとGWASの遺伝子型データを組み合わせた解析や、他の脳に関連する精神・神経疾患との関連メチル化部位の比較なども予定している。統合的な解析には2017年度に血液のDNAメチル化解析のデータを利用して確立したmeQTLを用いた方法を用いる予定としているが、meQTLの部位自体もまた、血液と脳ではある程度異なることが予想される。そこで、脳でmeQTLを探索している先行研究の結果を利用すると共に、本研究で脳のメチル化を探索したサンプルのゲノムワイドな遺伝子型データも取得し、本研究のサンプルでもmeQTLの同定を試みる。

備考

東京都医学総合研究所精神行動医学研究分野睡眠プロジェクト
http://www.igakuken.or.jp/sleep/

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] An Epigenome-wide Association Study of DNA Methylation and An Integrated Genetic and Epigenetic Approach for Narcolepsy2018

    • 著者名/発表者名
      Shimada, M., Miyagawa, T., Toyoda, H., Tokunaga, K., and Honda, M.
    • 雑誌名

      Sleep

      巻: 41 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1093/sleep/zsy019

    • 査読あり
  • [学会発表] An epigenome-wide DNA methylation analysis of narcolepsy and integrative analysis with GWAS data2017

    • 著者名/発表者名
      嶋多美穂子, 宮川卓, 豊田裕美, 徳永勝士, 本多真
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第62回大会

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公開日: 2019-12-27  

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