本年度は正規直交系を初期値に持つ,種々の分散型方程式(波動方程式,クライン-ゴルドン方程式,分数階シュレディンガー方程式)に対するストリッカーツ評価式を研究し証明を与えることに成功した.加えてその結果を方程式の適切性,輸送方程式の解の速度平均,ベゾフ空間型の不等式の改良に応用し論文の形にまとめ投稿した.また8月から12月までの間に英国のバーミンガム大学において,Jonathan Bennett教授との共同研究を進めた.具体的には,フーリエ拡張作用素に関連する未解決問題への工学的なアプローチの研究である.特に溝畑・竹内予想として知られている,フーリエ拡張作用素の重み付き不等式に対して,X線によるトモグラフィーの原理を適用することで新たな進展を生んだ.すなわち,X線により調べたい対象を「スキャン」し対象のより詳細な性質を引き出すというものである.このアイデア自体は去年度からあったものであるが,今年度は実際にそのアイデアを形にすることができた. また,Brascamp-Liebの不等式の研究にも進展を生んだ.具体的には近年,Barthe-Wolffによって得られたinverse Brascamp-Liebの不等式を,熱流単調性を用いたアプローチで解析した.Barthe-Wolffらは最適輸送の理論を応用することで,この不等式を解析し証明を与えているが,本研究では最適輸送の手法の代わりに熱方程式を用いた解析を行い,inverse Brascamp-Liebの不等式と他の不等式とのより深い関係を明らかにすることに成功した.
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