本研究では、北海道のトドマツ・カラマツ人工林と天然林を対象とし、繁殖期と越冬期の鳥類群集を調べることで、林業活動と鳥類保全の両立に向けた森林管理方法を提言する。 2019年度は、繁殖期の2年目の調査を実施した。2017年度から実施してきた調査と合わせ、北海道全域から選択したトドマツ人工林、カラマツ人工林、天然林(計117地点)において、繁殖期(5~7月)と越冬期(12~2月)それぞれ2回ずつの鳥類調査を完了した。具体的には、各調査地点に設定した300 mの調査ライン上を歩き、調査ラインの両側50 m以内で鳴き声や姿を確認した鳥類の種類と個体数、出現した位置を記録した。 調査結果を整理し、解析を進めた。各種の個体数を応答変数、林齢、広葉樹混交率、それらの2乗項、各季節の気温、積雪深を説明変数、調査地をランダム切片、種をランダム切片・傾きとした一般化線形混合モデルを用いて、機能群(森林性種、草原性種)、林種(人工林、天然林)、季節(繁殖期、越冬期)ごとに解析した。地域の気候(各季節の気温や積雪深)によって鳥類の種構成が変わるものの、全道各地において、繁殖期には約10年生まで若齢人工林が草原性鳥類の生息地として役立ち、人工林の林齢が高くなると通年の森林性鳥類の密度が高まった(ただし、50年生程度で頭打ち)。このパターンは天然林でもみられたが、森林性鳥類の密度が頭打ちにある林齢は人工林よりも高いことが示唆された。さらに、人工林内の広葉樹混交率の影響は季節によって異なっており、様々な鳥類の密度が高まる混交率は、繁殖期には約50%であったが、越冬期には約30%であった。 現在、さらなる解析を行い、人工林の林齢と混交率に対する鳥類群集の非線形な応答を複数の季節で示した本研究の成果を論文としてまとめ上げる準備を進めている。
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