研究実績の概要 |
一夫一妻的配偶形態はヒトの現代社会において多く観察されている一方、どのような認知神経機構がその維持を可能にしているかについては、依然として一貫した説明が行われていない状況にあった。 本研究では、機能的磁気共鳴画像法 (functional magnetic resonance imaging, fMRI)を用いた心理実験を通し、そうした関係の維持を可能にする機構を、行動と脳の両面から明らかにすることを目指した。これまでの研究結果から、非常に魅力的な異性に対する「浮気的」な関心を抑制する上では、従来提案されていた能動的・顕在的な抑制機構に加え、「浮気的行為」に対するネガティブ情動の喚起による自動的・潜在的な抑制機構も必要になりうることが示された (Ueda et al., 2017, Cognitive, Affective, and Behavioral Neuroscience)。また、これら2つの機構の関係性は交際段階によって変動しうることが示された (Ueda et al., 2018, Experimental Brain Research)。すなわち、パートナーに対する愛着やコミットメントが強く示される関係の初期では、能動的・顕在的な抑制が伴わずとも、浮気的関心が抑制される一方、長期的な関係になると、そうした機構が抑制に関与するようになることが示唆された。これらの検討を通し、「我々ヒトの社会において広く観察される一夫一妻的な関係が、どのようにして維持されているか」という文化人類学的問題に対し、実験的エビデンスに基づいた説明を提案することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の2件の研究はいずれも、すでにプロジェクトを完了しており、当初の研究計画の大半を達成することができた。それらの成果は、国内外の学会、および2件の国際学術誌において報告を行った (Ueda et al., 2017, Cognitive, Affective, and Behavioral Neuroscience; Ueda et al., 2018, Experimental Brain Research)。現在は主に、意思決定を支える身体反応の側面に焦点を当てた、発展的な検討を実施している。
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