研究課題/領域番号 |
17J01847
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大道 竜次 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | アクシオン / 暗黒物質 / インフレーション / 大統一理論 |
研究実績の概要 |
アクシオンは、暗黒物質の有力な候補であり、強いCP問題や超弦理論の観点からも注目されている。現在、様々なアクシオン探索実験が進行・計画中であり、アクシオン模型の構築や、実験に対する理論予言をおこなうことは重要である。今年度は、アクシオン暗黒物質に関して研究をおこない、その成果として3つの論文を発表した。 まず、アクシオンが媒介する長距離力に関する研究をおこなった。アクシオンが媒介するスピン間相互作用はdipole-dipoleポテンシャルで表され、その符号は相互作用が引力か斥力かを表す。本論文では、多くの過去の文献で用いられているポテンシャルの符号に誤りがあることを指摘した。 次に、インフレーションと暗黒物質を同時に説明できるアクシオン模型を提案し、その宇宙論を調べた。そして、インフレーションと再加熱、暗黒物質の全てを説明できるパラメータ領域が存在することを示した。また、その領域は将来の太陽アクシオン探索実験で調べられる範囲にあり、実験的観点からも興味深い結果が得られた。 最後に、QCDアクシオンを含む大統一理論の模型を提案した。隠れたセクターを考えることで、SU(5)大統一理論が可能になることが知られている。今回の研究では、QCDアクシオンをこの理論に自然に導入できることを示した。また、力の統一を要請することで、QCDアクシオンと光子間の結合定数が、通常のモデルに比べてO(100)倍まで大きくなることを明らかにした。これにより我々のモデルにおけるQCDアクシオンのパラメータ領域は、将来実験で探索できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は「2つのコサインポテンシャルを持つアクシオン暗黒物質」と「隠れたセクターを持つ模型」の宇宙論を調べることを計画していた。本年度は、2つのコサインポテンシャルを持つアクシオン暗黒物質がインフレーションも説明できることを示しただけでなく、隠れたセクターを導入することで、QCDアクシオンを含む大統一理論の構築に成功した。したがって、当初の計画以上に発展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず計画通り、複数のコサインポテンシャルを持つアクシオンについて研究をおこなう。また本年度に構築した大統一理論の模型は、当初の予想以上に興味深い性質を持っており、超対称性や余剰次元などの観点から調べてみる予定である。
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