研究課題/領域番号 |
17J01852
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
石丸 真美 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 生体アミン類 / カラムスイッチング / イソクラティック溶離 / 水産物の品質劣化 |
研究実績の概要 |
本年度は水産物の品質に関わる成分のうち、1. ビタミンDの蛍光HPLC法の開発ならびに2. 生体アミン類のカラムスイッチングHPLC法の開発を行った。 1. ビタミンDの蛍光HPLC法の開発:当初の計画ではアルコール性水酸基に反応する1-anthroyl cyanide (ACN)を用いてビタミンDを蛍光標識化することとしていたが、ACNは魚肉に含まれる多量のコレステロールにも反応し、これがビタミンD分析を阻害すると分かった。そこでジギトニンを用いてコレステロールの除去を行ったが、他の夾雑物ピークとACNの蛍光強度不足から試料中ビタミンDの検出は依然として困難であった。そこで新たな蛍光標識試薬として、ジエン構造に反応する4-[2-(6, 7-dimethoxy-4-methyl-3-oxo-3, 4-dihydroquinoxalinyl) ethyl]-1, 2, 4-triazoline-3, 5-dione (DMEQ-TAD)を選択し、標準物質を用いて検討した結果、ACNよりも約10倍高い感度でビタミンDを分析することができ、コレステロールの蛍光標識化を回避することが可能となった。 2. 生体アミン類のカラムスイッチングHPLC法の開発:水産物の品質管理ならびに機能性成分として重要な生体アミン類は、現在グラジエントHPLC法によって分析されている。本研究では、グラジエント法による分析カラムへの負担や再現性の低さを問題視し、イソクラティックHPLC法の検討を行った。その結果7種の生体アミン類を45分以内に分離することが可能となったが、試料注入後130分後に妨害ピークが出現することが明らかとなった。そこでカラムスイッチングを用いたステップワイズHPLC法の開発を行い、45分以内で7種のアミン類をイソクラティック条件で分離し、同時に妨害ピークの排除を行うことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビタミンDの蛍光HPLC法の開発について、当初蛍光標識試薬として検討していた1-anthroyl cyanideに関して、試料からのビタミンD抽出・精製ならびにコレステロールの除去を検討することで、効率的な蛍光標識化とHPLC分析法の開発を目指したが、蛍光強度の不足とさまざまな夾雑物の蛍光標識化から、微量なビタミンDピークの分離を達成することができなかった。また、HPLC分析は初め、夾雑物の除去を目的としてカラムスイッチング法を合わせたイソクラティック溶出を用いて検討を行っていたが、この条件ではビタミンDピークと夾雑物ピークの分離が達成できなかった。そこでまず、蛍光試薬の変更を行い、より特異性を高めるためにジエン構造に反応する4-[2-(6, 7-dimethoxy-4-methyl-3-oxo-3, 4-dihydroquinoxalinyl) ethyl]-1, 2, 4-triazoline-3, 5-dione (DMEQ-TAD)を選択し、至適反応条件の探索ならびに標準物質を用いたHPLC条件の再検討を行った。さらに、HPLC分析における分離改善のためにグラジエント溶出を用いることとした。現在は、これらの変更点に関する検討を進めている。 一方で、申請者は水産物の品質に関わる成分として生体アミン類にも着目し、これの蛍光HPLC法の開発を行った。現在はグラジエントHPLC法による分析が主流であるこれらの化合物を、本研究によってイソクラティック溶出で分離することが可能となり、さらにカラムスイッチング法を用いることで分析と同時に分析妨害物質の除去を行うことが可能となった。現在は、本研究成果を取りまとめた学術論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、来年度前期においては本年度から引き続き、ビタミンDの蛍光HPLC法の開発を行う。初めに蛍光標識試薬としてDMEQ-TADを用いた魚肉試料中のビタミンDの蛍光標識化について、試料からのビタミンDの抽出・精製ならびに蛍光標識化の至適反応条件の検討を行う。次に蛍光標識化ビタミンDのHPLC分析について、グラジエント溶出による効率的な分析条件を検討する。最後に、開発した分析法のバリデーションテストを行い、新法による水産物などのさまざまな食品のビタミンD含量の分析を行い、本法の有用性を検証する。また、本研究成果について取りまとめた学術論文を投稿する。 来年度後期は、申請者が開発してきた食品中の脂溶性ビタミン類(A, D, E)ならびに生体アミン類の分析法を用いた生魚の健康評価法の開発を行う。当初の研究計画ではアルデヒドを健康指標として検討していたが、これに生体アミン類を加えて研究を行う。初めに開発した食品の成分分析法を応用して、生魚の組織中成分分析法を開発する。次に健康魚と病魚の組織中成分を分析し、その分析結果を比較して、生魚の健康状態による組織中成分の変化を調査する。その調査結果を基に、分析した組織中成分の生魚の健康指標としての有用性と、開発した組織中成分分析法の生魚の健康評価法としての有用性を評価する。また、本研究成果を取りまとめた学術論文を投稿する。
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