今年度の主な成果は,①太陽電池パドルの駆動を利用して「迅速性と安定性の両立ができる姿勢制御則」の確立をしたこと,②構造振動の影響の見積もりを行ったこと,③提案手法を利用する超小型衛星の概念設計を行ったこと,以上3点である. ①まず,問題を2軸姿勢制御に限定することで制御自体の難易度を下げ,指向制御を可能にする手法を構築した.この手法を用いると,センサ視線方向にマヌーバ中不必要な角速度が発生し,最終姿勢に影響を及ぼしてしまうが,その影響は実際の運用上は問題ないことが多く,実ミッションに広く応用できる.次に,衛星の姿勢制御機器としてしばしば搭載される,リアクションホイールを併用する制御手法を構築した.これによって制御の自由度が増し,従来宇宙ロボットの制御に用いられてきた一般化ヤコビ行列を応用することで,衛星システムの3軸姿勢制御が可能となることが分かった.
②太陽電池パドルを駆動することによる1番の懸念は,パドル駆動時の構造振動が衛星姿勢に悪影響を与えることである.この影響を数値計算により見積もり,超小型衛星のような小型システムにおいては高次の非常に微細な振動のみが生ずる見込みであることを明らかにした.さらに,先進的な実ミッションを想定し,仮定したミッションの範囲ではパドル駆動による構造振動が問題とならないことを明らかにした.
③本来,2年度目に実施する予定であった項目であるが,①太陽電池パドルの駆動を利用した「姿勢制御則」の確立ができたこと,それを利用した先進的科学ミッションの定義ができたこと,などを受けて,予定を変更して本年度にこれを実施した.現状超小型衛星に用いることのできる実際の部品,機器の性能などを考慮した上で,提案手法による姿勢制御が可能であり,実際にそのような衛星のシステム設計が行えること,および,定義した科学ミッションが遂行できる見込みであることなどを明らかにした.
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