本年度は、前年度に続いてRNAの構造解析のデータの統合解析のためのアルゴリズムであるreactIDRの開発を行い、SHAPE-MAPやDMS-Seqなど異なるデータに対しても適用できるよう改良を行った。開発したアルゴリズムとその解析結果についての論文が、国際会議APBC2019での口頭発表に採択され、プロシーディングスが出版され、さらなる発展的な研究につながることが期待される。 また、シンシナティ大学佐々木敦朗准教授らのグループとの共同研究で、グリオブラストーマにおける代謝を様々に変化させたときのトランスクリプトームの解析の結果から、変動遺伝子の共通因子を見つけることで、最終的にグリオブラストーマにおけるIMPDH遺伝子の新たな機能の発見に寄与することができ、解析結果が出版予定である。また同グループとの共同研究により、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームの複数のオミクス情報からそれらの共発現ネットワークの統合的な解析を行い、がん関連遺伝子の新たな制御メカニズムを共同研究者らとともに明らかにすることができた。加えて、このような複数オミクス層におけるエンリッチメント解析における事前分布と、それに基づき各サンプルごとに特異性の高い解析を行うための手法開発をコールドスプリングハーバー研究所のGillis准教授との共同研究において実施した。 さらに、医療画像の分野でのオミクス情報統合において現状最大の問題である、転移学習における精度の低下を改善するために、画像特徴に含まれるバッチエフェクトや画像特徴間の相関関係などの構造パターンを次元圧縮により抽出し、転移学習の精度を最大限に維持するロバストなラジオゲノミクス手法の開発に取り組んだ。これによりラジオゲノミクス研究のさらなる発展と、画像情報以外への応用が期待される。得られた結果については近日中に学術誌に投稿する予定である。
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