研究実績の概要 |
本年度は、独自に取得した天体観測データ、および他のサーベイ観測データを用いたAGNブラックホール降着流の研究を行った。
1. 近年発見された高速電波バースト(Fast Radio Bursts)と呼ばれる系外天体現象について、低光度AGN中心ブラックホールに付随する高エネルギー現象を起源とするモデルが提唱されていた。我々は、高速電波バーストFRB121102の母銀河に対して、すばる望遠鏡に搭載した補償光学付き面分光装置Kyoto 3DIIを用いて観測を実行し、高速電波バーストの母銀河中での発生位置を決定した。本観測により、高速電波バースト発生位置が銀河中心核領域と一致していないことを明らかにし、低光度AGNシナリオを棄却することができた。結果はThe Astrophysical Journal誌に発表した。
2. 2013年以降, 赤外線衛星WISEによって、半年に一度の頻度で全天の3.4μm/4.6μmの赤外線測光サーベイデータが取得されている。AGNの赤外線光度変動は、ブラックホール降着円盤外縁に対応するダスト放射領域の変動を反映しており、赤外線変動データの解析によって紫外-可視光光度変動では捉えられないような大きなスケールの降着流の構造を解明することができる。我々はWISE衛星のAGN光度変動データの時系列解析によって、AGN1天体(GQ Comae)のダスト放射領域のサイズの測定が可能であることを実証した(2018年度天文学会春季年会口頭発表)。次年度には、全天のAGNに対して同様の解析を適用することで、AGNダスト放射領域サイズとAGN光度の間の関係について統計的解析を行うことを目指している。
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