研究課題/領域番号 |
17J01940
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
和田 侑也 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | オリゴチオフェン / 太陽電池 / 不斉増幅 / ポリイソシアニド / らせん構造 / 有機半導体 |
研究実績の概要 |
今年度は、アミノ酸由来イソシアニドモノマーを重合する際に発現する高度な不斉増幅現象を最大限に活かしたアプローチで、半導体ユニットの規則配列を目指した。 クロスカップリング反応を繰り返すことで、アミノエチル基含有オリゴチオフェンユニットを合成し、N-formylglycineとの脱水縮合及びイソシアニド化反応を経て、オリゴチオフェンユニットを導入したグリシン由来光学不活性イソシアニドモノマーを得た。さらに、アラニンから誘導される既報の光学活性イソシアニドモノマーとの共重合反応を行うことで、目的のアミノ酸由来ポリイソシアニド誘導体を合成した。各モノマーの仕込み比を系統的に変化させ、重合を行うことで、一方向巻きのらせん高分子を得るために要する光学活性モノマーの下限量を決定した。その結果、当該共重合系において、「わずか1 mol%の光学活性ユニットの不斉」が「99 mol%の光学不活性ユニットからなる高分子鎖全体」へと伝播し、一方向巻きに片寄ったらせん高分子が定量的に生成することを見出した。さらに、円二色性スペクトル測定及び分子動力学シミュレーション結果から、半導体ユニットがらせん状に規則配列していることが示唆された。導入する半導体ユニットやアミノ酸由来光学活性モノマー中の不斉炭素上の置換基に系統的な分子構造チューニングを施すことで、高度な不斉増幅が、側鎖間に作用する水素結合や立体障害等の絶妙なバランスにより生じていることを明らかにした。さらに、クロロホルム溶液中における本らせん高分子のコンホメーションの安定性を調査した。その結果、既存のアラニン由来ポリイソシアニドベースの半導体材料と比較して、本不斉増幅型高分子のらせん構造の安定性が大幅に向上することを見出した。主鎖近傍の置換基の立体障害により、側鎖間の相互作用がより効率的に作用し、らせん構造の安定化に寄与したものと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請時には、平成29年度の研究計画として、「p/n連結側鎖を導入したらせん状ポリイソシアニドの合成法の確立」及び「電極基板上への垂直固定化と両極性半導体特性の評価」の課題を挙げていた。研究実績の概要に記載の通り、アミノ酸由来イソシアニドモノマーを重合する際に発現する高度な不斉増幅現象を利用した、半導体ユニットの高密度規則配列には成功したが、残りの研究課題については、未だ検討段階である。そのため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度確立した、不斉増幅型らせん状ポリイソシアニド誘導体の側鎖ユニット(p型半導体ユニット)をp/n連結側鎖に置き換えることで、らせん状両極性半導体の開発を目指す。また、昨年度から引き続き、電極基板上へのポリマー鎖の垂直固定化と両極性半導体の評価を行うと共に、モルフォロジー制御から脱却した有機薄膜太陽電池開発を行う。 「電極基板上への垂直固定化と両極性半導体特性の評価」→ ポリマー末端にホスホン酸基を複数個有する多脚型アンカー基を導入することで、基板に固定化し、ポリマー鎖を自立させる。電子物性に関する知見を得るために、制限電荷空間電流法を用いてポリマー配向薄膜の「基板垂直方向の電荷移動度」を評価する。さらに、電界効果トランジスタ法により、「基板水平方向の電荷移動度」を評価することで、電界移動度の異方性に関する知見を得る。 「モルフォロジー制御から脱却した勇気薄膜太陽電池開発」→ らせん状両極性半導体を太陽電池素子に応用する。本素子に太陽疑似光を照射することで、太陽電池性能を評価する。素子性能の安定性について、発電効率の時間依存性を様々な温度条件で評価することで定量化する。電荷移動度および太陽電池性能の結果から合成へとフィードバックし、主鎖とp/n連結側鎖との間のスペーサーや、アルキル側鎖の最適化を行う。
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