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2018 年度 実績報告書

三倍体ドジョウの配偶子形成過程における特殊な染色体挙動と妊性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17J01971
研究機関北海道大学

研究代表者

黒田 真道  北海道大学, 水産科学院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワードFISH / 染色体識別プローブの開発 / 自然クローンの交雑起源 / 特殊な配偶子形成
研究実績の概要

日本に生息するドジョウにはA,Bの二系統が存在し、一部地域では二系統の交雑起源であるクローン系統が発見され、2n卵を作り雌性発生を行う。またクローン系統の二倍体が偶発的に精子を取り込むとクローン由来三倍体が生じる。この三倍体オスは様々な倍数性の受精能力を持たない精子を作り不妊になるが、メスは卵形成過程で異質なゲノムを1セット排除することで1nの卵を形成する。つまりメスには不妊を回避する機構が備わっており、また減数分裂のプロセスはゲノム構成・倍数性・雌雄によって異なることを示唆している。本研究では特にクローン由来三倍体メスが行う減数分裂プロセスの解明を目指している。そのためには二系統の染色体を識別するツールの開発が必要であり、これまでにB系統の染色体を識別するプローブ(ManDra-B)が開発された。それに対してA系統を識別するプローブ(ManDra-A)も開発されたが、シグナルが弱く安定した検出が困難であるといった問題があった。そこで安定してA系統の染色体を識別できるプローブを開発するため、既知のManDra-A配列 (136bp) を参考にManDra-A領域を増幅するプライマーを設計し、ManDra-A領域が5回繰返し存在すると推測された増幅産物からプローブ (ManDra-A 5 repeats) を作製しFISHを行った。その結果、A系統では2本の中部動原体着糸型 (M型) と24本の端部動原体着糸型 (T型) 染色体のセントロメア領域にManDra-A 5 repeatsシグナルが非常に安定して検出された。それに対してB系統ではシグナルが検出されなかったため、ManDra-A 5 repeatsプローブはA系統の染色体を識別する強力なツールになると判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

特殊な配偶子形成を染色体の挙動から解明するには、各系統の染色体を識別するプローブが必要である。本年度の成果としてA系統の染色体を安定して検出するプローブの開発に成功した。これによって二系統の染色体挙動を追跡することが可能になった。また、サンプル魚も順調に成長しており、組織学的観察の材料として利用可能になっている。
また本研究の対象となる三倍体のオスはゲノム構成や倍数性によって形成する精子の倍数性やゲノム構成も変化することが報告されている。これまで精子のゲノム構成・倍数性は受精卵から生じた子孫のDNA解析とフローサイトメトリーの結果を組み合わせることで判定してきた。しかし、フローサイトメトリーでは個々の精子の倍数性を判別することはできず、受精能力を持たない異常精子のゲノム構成は子孫から推定できない。そのため個体のゲノム構成・倍数性が精子形成に与える影響を理解することが困難であった。そこで個々の精子のゲノム構成と倍数性を判別するためにA系統を識別するManDra-Aプローブ、B系統を識別するManDra-Bプローブ、そして倍数性を判定する5.8S+28S rDNAプローブを用いてSperm-FISHによるゲノム構成と倍数性判別法の確立を目指してきた。これまでに系統判別プローブと倍数性判別プローブを組み合わせることで精子のゲノム構成と倍数性の判定が可能であることがわかってきた。今後さらに詳細に分析を行う。

今後の研究の推進方策

クローン由来三倍体メスの卵巣を裁断後、最終成熟に関わるホルモンを用いて培養を行い、 (動物極側へ移動開始~崩壊) までの卵核胞を摘出し固定する。卵核胞に対してA、B系統識別プローブを用いて2-Color FISHを行い、1n卵ゲノムと排除ゲノムを調査する。またパーコールを用いて卵巣から各成長段階の卵母細胞を単離し、各卵母細胞でA、B系統識別プローブを用いて2-Color FISHを行い、異質ゲノムの排除機構を解明する。
同質三倍体オスの精巣から染色体標本を作製し5.8S+28S rDNAプローブを用いてFISHを行い、精母細胞の減数分裂時における対合像を観察することで不妊原因を調査する。異質三倍体オスではパーコールを用いた不連続密度勾配遠心により、精巣細胞からA型精原細胞、B型精原細胞、精細胞、6n精子様細胞を単離し、各細胞で5.8S+28S rDNAプローブを用いてFISHを行い、6n細胞化のタイミングを解明し、さらにA型精原細胞を培養し経時的に観察することで6n細胞の形成メカニズムを解明する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Aberrant meiotic configurations cause sterility in clone-origin triploid and inter-group hybrid males of the dojo loach, Misgurnus anguillicaudatus2019

    • 著者名/発表者名
      Masamichi Kuroda, Takafumi Fujimoto, Masaru Murakami, Etsuro Yamaha, Katsutoshi Arai
    • 雑誌名

      Cytogenetic and Genome Research

      巻: ー ページ: ー

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clonal reproduction assured by sister chromosome pairing in dojo loach, a teleost fish2018

    • 著者名/発表者名
      Kuroda Masamichi、Fujimoto Takafumi、Murakami Masaru、Yamaha Etsuro、Arai Katsutoshi
    • 雑誌名

      Chromosome Research

      巻: 26 ページ: 243~253

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s10577-018-9581-4

    • 査読あり
  • [学会発表] 系統識別プローブを用いたFluorescence in situ Hybridization (FISH)によるクローンドジョウの交雑起源の解明2019

    • 著者名/発表者名
      黒田真道・柴田季子・村上賢・山羽悦郎・藤本貴史・荒井克俊
    • 学会等名
      平成31年度日本水産学会春季大会
  • [学会発表] Sperm-Fluorescence in situ Hybridization (Sperm-FISH) を用いた精子のゲノム構成と倍数性判別法2019

    • 著者名/発表者名
      黒田真道・柴田季子・村上賢・山羽悦郎・藤本貴史・荒井克俊
    • 学会等名
      平成31年度日本水産学会春季大会
  • [学会発表] ドジョウ染色体における5SrDNA領域のFluorescence in situ Hybridization (FISH)2019

    • 著者名/発表者名
      柴田季子・黒田真道・山羽悦郎・藤本貴史・荒井克俊
    • 学会等名
      平成31年度日本水産学会春季大会
  • [学会発表] Sister chromosome pairing leads to clonal gametes in dojo loach, a teleost fish2018

    • 著者名/発表者名
      Masamichi Kuroda, Takafumi Fujimoto, Masaru Murakami, Etsuro Yamaha, Katsutoshi Arai
    • 学会等名
      Genetics Society of AustralAsia, 6th Asia-Pacific Chromosome Colloquium
    • 国際学会
  • [学会発表] Aberrant synapsis in sterile hybrid and triploid males of dojo loach, Misgurnus anguillicaudatus (Teleostei, Cobitidae)2018

    • 著者名/発表者名
      Masamichi Kuroda, Takafumi Fujimoto, Masaru Murakami, Etsuro Yamaha, Katsutoshi Arai
    • 学会等名
      22nd International Chromosome Conference
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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