本年度は,昨年度に続き,偏光変調全内部反射蛍光(PM-TIRF)を用いた液液界面における光学特性を測定する新規な方法を開発し,光学活性な集合体形成の電位依存性を解明することを目指した。キラル分子存在下でらせん型の会合体を形成し,円二色性を示すことが報告されているポルフィリンを用いて円偏光型のPM-TIRF分光法を適用したが,キラリティを示すような応答は観測されなかった。この原因の一つは,応答が光学系装置の状態に強く依存し,円二色性を再現良く測定するには応答が小さすぎることである。再現性の高い光学系の調整方法が課題である。しかし,昨年度と比較すると,分子の吸着配向性に起因する直線偏光からのシグナルの影響を大きく改善することができ,簡便な円二色性測定は非常に困難であるが,本実験で界面化学種のキラリティ測定に対する可能性を示した。また,本年度は,海外の研究グループとの共同研究にも取り組み,電位制御下の液液界面におけるアニオン性亜鉛ポルフィリンの光機能性自己組織化膜の生成機構を研究した。水溶性のポルフィリンmeso-tetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrinato zinc(II)(ZnTPPC)のZnTPPC自己組織化膜の生成機構を分光電気化学的に解析したところ,電位を掃引することでカルボキシフェニル基間の水素結合によってZnTPPCが会合することが明らかになり,膜生成にポルフィリン分子間の水素結合が重要であることが示唆された。これらの結果は,日本分析化学会第67年会で報告し,アイルランドのグループと共同で論文作成中である。また,昨年から続けてきたキノリノール系については,論文投稿に向けて準備を進めていたが,年内の投稿には至らなかったが,続けて準備を進めている。
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