本研究では、社会的アイデンティティが競争意欲に与える影響を経済実験で検証した。男性よりも女性は能力が発揮できなかったり、競争を避けることが知られているが、女性は女性同士での競争環境では能力を発揮できることも知られている。この研究では、競争相手が同じ集団に属するかそれとも異なる集団に属するかで、パフォーマンスに違いがあるか、また、競争態度が異なるかを明らかにすることが目的である。従来の研究では競争相手の集団意識は性別に基づくものであるが、本研究では実験上ランダムに作成した集団に基づくものである。そのため、性別に基づくバイアスを除去した上で、競争相手の集団意識が人々の行動に影響を与えるかを検証できる。実験の結果、男女ともに、自分と異なる集団が競争相手のときのほうが、パフォーマンスが高いことがわかった。また、競争態度には、競争相手の集団意識は影響与えないが、自分と異なる集団が競争相手のとき、男性は自信過剰になることがわかった。 加えて、昨年度から引き続き、A社から提供を受けた残業時間に関するデータ等を用いて、長時間労働のピア効果の分析を行った。分析の結果、長時間労働しやすい人がチームにいると、そのチームの他のメンバーも長時間労働しがちであることがわかった。さらに、同じチームメンバーが長時間労働している場合、幸福度が低く、同じチームメンバーよりも長く働いている人ほど幸福度が高いこともわかった。
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