研究課題/領域番号 |
17J02034
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金谷 晋之介 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 不安定原子核 / レーザー分光法 / 超微細構造 / 原子核構造 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、32Mg近傍において基底状態の構造が未知である32Naの構造を調べるため、レーザー分光法によって32Na原子状態の超微細構造を測定することである。32Mg近傍の原子核は、基底状態で大きく変形し、また励起状態でも異なる変形度の状態が混在した状況にあるなど、核構造の異常が報告されており注目を集めている。このような陽子数に比べて中性子数が極端に多い原子核における異常構造は、他の質領域でも示唆されており、現在解決すべき最重要課題の一つである。ただし問題は、32Naの生成量が毎秒100個程度と極めて少ないため、従来のレーザー分光法では感度が十分でない点である。今後のより生成限界に近い原子核への研究展開も見据えて本研究では、超高感度なレーザー分光法の開発をカナダTRIUMFにて行った。 初年度である平成29年度は、テスト実験として、安定核23Naに対して「蛍光計数法」と「レーザー共鳴イオン化法」という異なる2つのレーザー分光法を用いた超微細構造測定を行った。「蛍光計数法」では、レーザーによって共鳴励起した原子の蛍光を計数するのに最適な集光システムの開発や、狭波長帯フィルター等によって散乱レーザー光検出のバックグラウンド事象を除去する等の改善策を講じた結果、従来比約45倍の大幅な測定感度向上を達成した。また「レーザー共鳴イオン化法」では、それぞれ波長の異なるレーザー2本による原子の2段階励起を用いて、励起状態から選択的にイオン化された原子を計数することで超微細構造を調べる。これは、TRIUMFではまだ確立していない手法であり、蛍光計数法を大きく上回る測定効率を達成する可能性を秘めている。32Naの超微細構造測定に関してどちらの手法が適切か評価するためテスト実験を行った結果、主なBG事象の起源や実用化前に評価すべき課題など、まずは今後に向けた問題点を明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光計数法に関して、まずは大幅な測定効率向上を達成することができた。この結果を踏まえて、偏極不安定原子核の非等方性ベータ線の非対称度測定という別の手法を組み合わせることで、十分32Naの超微細構造測定が可能であるという確証を得た。 レーザー共鳴イオン化法では、当初の目標であった問題点の明確化は達成した。これらの解決に関しては、より生成量の少ない核種の研究に向けて、長期的な視点で継続して開発を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
今年度のテスト実験の結果、ようやく32Naの超微細構造が測定可能な目処が立った。2年目に当たる平成30年度は、実際に不安定核32Naビームを用いて実験を行い、32Na核基底状態の構造を解明していく。夏から現地カナダに2ヶ月程度長期滞在し、秋に実験を行う。得られた結果は、国内外の学会で発表していく予定である。
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