研究課題/領域番号 |
17J02040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹村 藍 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 2型糖尿病合併症 / 軽度高気圧酸素 / 大腸がん / 大腸炎症 / 有酸素的代謝 |
研究実績の概要 |
国内において2型糖尿病を発症している患者は、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんの発症率が高い。本研究では、軽度高気圧酸素 (1.3気圧、36-40%酸素) の環境に滞在することによって有酸素的な代謝を向上させて、大腸がんや大腸炎の発症を予防・遅延させることを目的とした。【実験1】大腸がんモデルラットを軽度高気圧酸素の環境に1日3時間にわたって滞在させ、大腸がんの発症を予防・遅延できるかどうかを検討した。大腸がんモデルラットを18週間 (月曜日から金曜日)、1日3時間にわたって軽度高気圧酸素の環境に滞在させた。大腸がん群、大腸がん+軽度高気圧酸素群では、大腸に腫瘍が確認された。しかしながら、腫瘍の数、大きさ、分布については、大腸がん群と大腸がん+軽度高気圧酸素群で有意な差は認められなかった。したがって、本研究で使用した軽度高気圧酸素の環境では、大腸がんの発症に対する抑制の効果は得られなかったと結論する。【実験2】大腸炎が大腸がんを誘発することが報告されており、大腸炎を抑制する方法を確立することは重要である。大腸炎症モデルラットを1日1回3時間にわたって軽度高気圧酸素の環境に滞在させた。普通飼育した群と軽度高気圧酸素に滞在させた群では、大腸炎症による下痢のレベルに有意な違いは認められなかった。遺伝子発現についても普通飼育した群と軽度高気圧酸素に滞在させた群では、有意な差は認められなかった。本研究で使用した軽度高気圧酸素の環境では、大腸炎の発症に対する抑制の効果は得られなかったと結論する。実験2では、2週間という短期間での軽度高気圧酸素の環境への滞在であった。滞在期間を延長することで下痢レベルが低下したり、炎症が軽減したりすると考えられる。なお、今回の実験では、モデル動物の作製、組織染色、遺伝子解析など今後の実験に繋がる方法を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、2型糖尿病、及び、2型糖尿病に合併する可能性の高い疾患に対する予防・改善方法を検討している。本年度の研究では、2型糖尿病に合併する可能性の高い大腸がんに対する軽度高気圧酸素の影響を検討し、問題なく順調に研究を進めることができた。次年度にも2型糖尿病に合併しやすい疾患として、骨粗鬆症に着目して予防・改善方法を検討する予定であり、これらの研究から本研究課題の達成が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、2型糖尿病、及び、2型糖尿病に合併する可能性の高い疾患に対する予防・改善方法の検討を進める。糖尿病を発症している患者では、神経障害、網膜症、腎症などの細小血管症以外に心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、末梢動脈疾患などの大血管症、さらに骨粗鬆症、うつ病、痛風などの様々な合併症が引き起こされる可能性が高い。特に高齢で糖尿病と骨粗鬆症を合併した場合、骨折による寝たきりが引き起こされるリスクが高まり、その後の生活の質を低下させる恐れがある。次年度においては、骨粗鬆症に対して軽度高気圧酸素の環境を使用した予防・改善方法を検討する予定である。
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