研究課題/領域番号 |
17J02041
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
馬 静言 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 磁性薄膜 / EMI / クロストーク / 強磁性共鳴 / 超高周波 |
研究実績の概要 |
集積回路の高性能化,小型化とともに,無線通信システム受信端末のチップ内での有害な電磁干渉が深刻な問題となっている.本研究は磁性薄膜を用いて,チップの上にカーバーすることにより,高周波数帯域の電磁ノイズを抑制することを目的としている. 透磁率および抵抗率それぞれ異なる磁性薄膜(CoZrNb, PdCo-CaF, NiFe)をスパッタリングに基づき作成した.三種類の磁性薄膜をそれぞれマイクロストリープラインの上に配置して,空間的な磁気シールド効果および線内の伝導損失を同時に測った.特定の周波数に現れた磁気シールド効果の極大は磁性薄膜の渦電流と強磁性共鳴の両方が寄与することにより,大きな磁気シールド効果を与えることがわかった.従って,高い透磁率は良いシールド効果および低いクロストークに寄与し,低い抵抗率が高い伝導損失を得られることが分かった.実測結果と解析結果がよく一致したことから,妥当性の高いものといえる. また,二本の平行している信号線を設計して,磁性薄膜のクロストーク影響を評価した.誘導ノイズ結合を明らかするため,磁性薄膜内部の磁束密度分布をマクスウェル方程式および有限要素解析から,理論計算および三次元電磁解析を行った.特性長に対する分析から,磁性薄膜内部の磁束密度の強さは信号線中心から膜エッジまで減衰し,磁束密度ベクトルは「磁極」状に分布することが明らかにした.磁性薄膜がクロストークに対する影響を確認した.その結果,パターン化した磁性膜を応用することで,優れたノイズ抑制効果が得られることが明らかとなり,ノイズ抑制磁性材料の新しい設計指針を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なる性質を持っている磁性薄膜のノイズ抑制効果を測ることにより,磁性薄膜のノイズ抑制メカニズムをさらに明らかにした.理論計算および電磁界シミュレーションから,磁性薄膜内部の磁束密度分布を明らかにした.そこで,磁性薄膜がノイズ抑制体としての誘導ノイズ結合を定量的に評価することができた.また,磁性薄膜の磁気シールド効果の評価手法を簡易化するために,新しいartificial material single layer(AMSL)計算法を試みている.
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今後の研究の推進方策 |
磁性薄膜がマイクロストリープラインの上にカーバーしたモデルに基づいて,縦方向の等価回路を検討し,縦方向全区域の磁束密度分布を明らかにする.今までのクロストーク影響についての評価は解析結果しかないため,これから同じモデルの実験を行い,実験結果と解析結果を比較して結論を改善する.磁極工学結晶を用いた近傍磁界計測法を用いて,磁性薄膜の表面磁束密度分布を測定し,理論計算に一致することを確認する.
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