研究課題/領域番号 |
17J02057
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅田 健太郎 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | R-Ras / シグナル伝達 / 軸索形態制御 |
研究実績の概要 |
細胞は、細胞外からの様々な刺激を受け、多様な細胞内シグナル伝達経路を介して細胞骨格系の再構築を行い、その形態を厳密に制御しており、低分子量G蛋白質のRasファミリーやRhoファミリーが重要な役割を担っている。Rasファミリーの一つR-Rasは神経細胞の軸索に局在し、活性型が様々な下流エフェクター分子を介して軸索の形態制御に関与していることがわかってきている。しかし、R-Rasの活性を制御する上流シグナルについては不明な点が多く、本研究ではR-Rasの活性制御に関わる細胞外分子の同定とその制御機構を分子レベルで解明することを目指している。 まずR-Rasの上流因子同定を目指して、候補となる細胞外分子を初代培養ラット神経細胞へ添加し、R-Rasの活性を測定した。その結果、脳内の栄養因子の一つであるBDNF(脳由来神経栄養因子)がR-Rasの活性化を引き起こすことを見出した。また、BDNFを神経細胞へ添加すると、軸索の成長(伸長と分枝形成)が促進されること、R-Rasの発現抑制を行った神経細胞では、BDNF添加による軸索の成長促進が見られないことがわかった。この結果から、BDNFはR-Rasを介して軸索の形態制御を行っていることが示唆された。次にBDNF添加により細胞内でR-Rasの活性化を引き起こす、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の同定を試み、候補分子としてRasGRF1に着目した。そして、内在性のRasGRF1の発現を抑制した神経細胞では、BDNFによる軸索の成長促進がみられないことがわかった。以上の結果から、BDNF添加によるR-Ras活性化と軸索の形態制御はRasGRF1を介していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、R-Rasの活性制御に関わる細胞外分子の同定とそのシグナル伝達経路の一部分を解明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、BDNF添加によりR-Ras活性化を引き起こすシグナルのより詳細な伝達経路の解明を目指す。具体的にはBDNF添加によるRasGRF1のリン酸化状態の変化や、そのリン酸化を引き起こす分子メカニズムの解明に取り組む予定である。また、見出したR-Ras活性制御機構とRhoファミリーとの関係の解明にも取り組み、細胞の形態制御を司る低分子量G蛋白質の機能間での協奏的なクロストーク機構の解明を目指す。
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