研究課題/領域番号 |
17J02122
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
陳 偉熙 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 空隙 / 積層構造 / 接触抵抗 / 誘起コイル |
研究実績の概要 |
先行研究では、X線CTを用いて単層一列の機械的ラップジョイント接合サンプルを観察し、接合断面に斑模様が存在することを確認した。この斑模様の物質を特定し、接合部の電気抵抗にもたらす影響を評価するため、X線CTで出力された白色X線のスペクトルに基づいたシミュレーションと実測試験の結果を比較した。シミュレーションでは、接合サンプルの断面存在しうる微小な空隙、酸化インジウム、そしてインジウムがそれぞれ存在した場合を仮定し、X線CT同様の投影と再構築を行ったもので断面画像のCT値を評価した。また実測試験用のサンプルでは、意図的に加熱によって空隙を発生させた接合サンプルを製作し、空隙の有無によるCT値の分布の変化を調査した。これらの結果から、空隙が存在することによってCT値が小さい領域が存在することがわかり、そして斑模様のCT値がこれに該当することから、これが空隙であることが確認できた。しかし、現段階では空隙が存在することと接合抵抗の直接的な関係性は見られなかった。これは、空隙が存在しない領域において接触の良し悪しが存在し、これが空隙の存在とを合わせて評価したものが接合抵抗であるためだと考えられるが、空隙の存在は接合部に機械的弱点をもたらすため、これを検出することは依然重要な課題である。 また、以上と同時に接合部に存在しうる空隙を検出できる電磁非破壊検査技術の検討を数値解析で行ってきた。そこで、既存の渦電流探傷技術で用いられる誘導コイルの形状を参考に4つの基本コイルモデルを作成し、接合面で誘起される電流と接合部周辺の磁場分布の変化を評価した。これまでの結果では、コイルの形状によって空隙が0.1 mmよりも深部に存在して場合にその検出が困難であることがわかった。計画より遅延しているが、まだ現段階で実験で検証することが困難であり、引き続きコイル形状の最適化の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私の研究は核融合炉の実現へ向けた分割型高温超伝導マグネットの接合部を非破壊検査する技術の開発である。本年度は、当該技術を開発するにあたり検査対象となる接合部電気抵抗影響因子を定めるべく接合部の物質分布を明らかにし、接合部製作時に空隙を生成しうることを確認した。この過程で、当初開発を予定していた二色X線CT評価技術の構築に成功したものの、単一の白色X線のスペクトルを取得し、シミュレーションと実測試験の比較を通して接合部内部の物質分布を評価しうることを確認した。一方で、並列して行われていた接合部における3次元電流分布解析では、各形状の誘起コイルを適用した場合の接合面に発生する誘起電流と接合部周辺の磁場分布の評価を行った。現状ではまだ予定していた数値解析的に理想的な検査/評価方法の確立に至っていないが、誘起コイルの形状に基づく誘起電流、磁場変化の特性を評価するのに至った。よって今後は引き続きコイル形状をパラメーターに検討する予定であり、当該研究における初年度の成果としてまだ一部最適化を残しているものの、おおよそ予定通りの結果は得られたと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
現状まだ数値解析上で接合部の内部に存在する空隙を検出/評価する方法の確立に至っていないため、まずは引き続きコイル形状の最適化に取り組む予定である。検出方法を確立した後、まずは要素実験で検証するために、高温超伝導線材で一層一列の単純な機械的ラップジョイントの接合サンプルを製作し、これに取り巻く形で評価システムの構築を行います。さらに、今後の多層多列の接合部の検査に向けた準備として、先進的な検査システムの開発を行っているミシガン州立大学の非破壊検査研究室にてノウハウを勉強するための訪問することを検討している。また、上記の電磁非破壊検査技術の開発に研究の主軸をおきつつ、他の非破壊検査技術の検討も行うことも考えており、ポルトガルのリスボン大学のHelena Ramos教授からいただいた超音波非破壊検査を用いた検査技術の助言と試験デバイスの提供を利用して、空隙の検出の可否について検証する予定である。
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