研究課題/領域番号 |
17J02126
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
福光 甘斎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 孤独 / 社会的隔離 / 扁桃体 |
研究実績の概要 |
社会的孤立による「孤独」がどのように認知され、「抵抗」から「絶望」へと至る生理・行動変化 (孤独反応)が引き起こされるのかの分子神経メカニズムはほとんど明らかではない。本年度は社会的隔離により引き起こされる孤独反応の行動学的解析手法を確立するため、同一ケージ内で中央に仕切りを挟むことにより、マウスをケージ内分離する手法を用いた。その結果、分離個体は仕切りの向こう側の個体を求めて、ケージの仕切りを噛む行動 (「抵抗」反応)が増加することが分かった。次に、社会的隔離により活性が変化する脳部位を特定するため、転写活性化分子指標であるc-fosのマッピングを行った。その結果、社会的隔離により分界条床核や扁桃体の一部の亜核や視床下部腹内側核などが活性化することが分かった。特に内側扁桃体中心核 (CeM)が活性化することが明らかになった。そこで、DREADDの一つであるhM3DqをCeMのCaMKIIa陽性ニューロンに導入し、CNO投与によりhM3Dqシグナルを誘導した。その結果、仕切りを噛む行動が増大したことから、CeMのCaMKIIa陽性ニューロンが「抵抗」反応に関わることが示唆された。一方、社会的分離2日後に中央の仕切りを取り外し、分離個体が元同居個体と自由に相互作用できるようにしたところ、分離個体は速やかに他個体と群居行動を示した。この時に活性が変化する脳部位を特定するためにc-fosのマッピングを行った。その結果、再集団化により、分界条床核や扁桃体の一部の亜核や視床下部腹内側核、内側視前野などが活性化することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抵抗反応に関わる可能性がある脳部位を特定し、活性化実験を行うことにより、実際に特定した脳部位が抵抗反応の制御に関わることを示すことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
特定した候補部位が抵抗反応に関わるのかを明らかにするために、興奮毒性を用いた脳部位特異的破壊実験や薬理遺伝学的手法を用いた部位特異的活性化実験を行う。また、社会的隔離刺激に反応したニューロンの種類を同定するためにマーカー分子とc-fosに対する二重染色を行う。さらに、「孤独」で反応する脳部位間の相互関係を明らかにする目的で順行性・逆行性神経トレーサーを用いた投射解析を行う。
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