研究課題/領域番号 |
17J02181
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
礒山 麻衣 東京大学, 情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 冷戦 / 日米関係 / 広報外交 / アジア財団 / The Asia Foundation / 学生問題研究所 / 矢内原忠雄 / 学生運動 |
研究実績の概要 |
①アジア財団と助成先の関係の分析 冷戦期アメリカの「アジア財団」が日本の教育団体に対し、助成を通じて、どのような方法や過程で影響力を行使したのかを分析した。日本の教育団体の事例として、矢内原忠雄が所長を務め、1958年から1962年まで学生調査やカウンセリング活動を行った「学生問題研究所」に焦点を当てた。先行研究では、アジア財団がCIAと関係があることは語られつつも、助成先に対して具体的にどのような影響を及ぼしたのかは明らかではなかった。しかし、今回の調査の結果、財団が助成先の活動に積極的に影響力を行使する過程が明らかになった。財団は、日本の学生の共産主義化を憂慮し、対策として矢内原を所長とした「学生問題研究所」の設立を構想した。その活動枠組を設定し、活動を注視し、研究所の解散に直接的な影響を与えるなどした。この成果の一部について、Asian Studies Conference Japanおよびシンポジウム「学生たちの戦後:矢内原忠雄と東大学生問題研究所から見た1960年安保前後の大学生像」にて発表を行った。 このほか、アジア財団が日本の学生団体(助成先の一つである「学生報道連盟」)に対して行った活動も、上記と同様の方法で分析した。この成果の一部について、日本教育学会および南洋理工大学でのシンポジウムにて発表を行った。
②アメリカでの資料調査 日本学術振興会「若手研究者海外挑戦プログラム」により、米国イェール大学のFilm and Media Studies ProgramのExchange Scholarとして、同大を拠点に「アジア財団」に関する資料収集を行った。10月下旬から11月上旬までは、スタンフォード大学内のフーヴァー研究所を、12月中旬には、ロックフェラー・アーカイブセンターを訪問し、資料調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカでの資料収集活動により、本研究の遂行に必要な資料の大半を入手することができたため。具体的には、イェール大学での調査により、これまでの調査では不明であった、財団本部の組織構造が断片的にではあるが明らかになり、アジア財団の成り立ちや政府との関わりを、より深く考察できる見通しが立った。フーヴァー研究所での資料からは、アジア財団の助成額が具体的に明らかになり、財団がどの国のどのような分野(教育、女性、メディア等)を重視して助成を展開したのかを、定量的な観点から考察できる見通しが立った。ロックフェラー・アーカイブセンターの資料からは、アジア財団が他の財団(ロックフェラー財団・フォード財団)とどのような協力体制を築こうとしたのか、それに対して両財団がどのように応答したのかを明らかにする手掛かりを得た。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカで収集した資料をもとに、本年度分析した「学生問題研究所」や「学生報道連盟」以外の教育団体・学生団体に注目した事例研究を行う。さらに、アジア財団の成立過程や、アメリカ政府・他財団との関わりをより深く分析し、アメリカ政府との関係冷戦期アメリカ広報外交の中での「アジア財団」の位置付けを明らかにする。
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備考 |
日本学術振興会「若手研究者海外挑戦プログラム」によりイェール大学にて研究課題「冷戦期日本の学生メディア活動と米国財団の反共広報文化外交」を実施。
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