本研究は、冷戦期アメリカのアジア財団による、日本の学生の反共化に向けた助成活動の展開・受容を明らかにすることを目的としている。今年度は、前年度(2018年度)に引き続き、アジア財団と助成先(日本の教育者団体・学生団体)の関係を明らかにするための事例研究を重ねた。また、アジア財団の助成活動全体の中での「教育向け助成の位置づけ」を検討した。詳細は下記の通りである。
①アジア財団から「民主教育協会」への助成事例の検討:アジア財団が最も継続的に多くの資金を提供した教育者団体である、民主教育協会への助成事例に注目した。先行研究では、アジア財団の教育助成は、冷戦戦略から外れた「慈善的活動」として捉えられてきた。しかし、「民主教育協会」への助成に関する財団内部資料から、本研究では、教育向け助成の背景にある政治性を明らかにした。なお、本研究はWorld Education Research Association年次大会において、Most Innovative Poster Awardを受賞した。 ②アジア財団から学生団体への助成事例の検討:前年度に引き続き、「学生報道連盟」および「学生放送協会」への助成事例を調査し、学生団体の国際的なメディア活動の展開と財団の助成方針の関係を検討した。この成果の一部について、American Studies Association年次大会において口頭発表を行った。 ③アジア財団における「教育向け助成の位置づけ」の検討:1952年~1975年にかけての日本向け助成について、財団の助成方針の変化を調査した。財団にとっての「教育向け助成」の位置づけや、「学生の反共化」に向けた助成活動内容が年代毎に変化する傾向を明らかにし、この変化とアメリカ政府の広報外交との間の関係性を検討した。
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