研究課題/領域番号 |
17J02194
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤本 知臣 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | ふるえ / 深部体温閾値 / 運動強度 |
研究実績の概要 |
運動時には、運動強度が高くなるにつれて体温低下時のふるえの感受性は低くなることが示唆されているが、運動強度が増加することによってふるえの深部体温閾値がどのように変化するかは明らかではない。本年度は上述した検討に関連して、従来の実験モデルでは測定できなかった運動時の動脈血圧を測定するため、肩までの浸水ではなく、腰部までの浸水を行い、上半身には冷水を流すことで冷却を行うことができる水循環スーツを着用する実験モデル作成することとした。しかしながら、水循環スーツでの冷却は浸水による冷却よりも冷却効果が弱いと考えられるため、腰部まで冷水に浸水し、上半身は水循環スーツによって冷却を行った状態で低強度運動を行った場合に、深部体温が低下し、ふるえの閾値が見られるかどうかを検討した。 健康な成人男性1名を被験者とし、上半身に水循環スーツを着用し、水循環スーツには水温~5℃の冷水を注入した。水温18℃の冷水に腰部まで浸水し、水中自転車エルゴメーターにおいて低強度運動 (回転数30 rpm、運動時の酸素摂取量は安静時の2倍程度) を行った。測定項目は、食道温、皮膚温、酸素摂取量、心拍数、動脈血圧、温度感覚とした。ふるえの特性は食道温に対して酸素摂取量をプロットし、酸素摂取量が増加し始める深部体温閾値および閾値以降の感受性を検討することで評価した。 その結果、低強度運動中における食道温は時間経過に伴い低下し、また、深部体温に対して酸素摂取量をプロットすることで、35.7℃に酸素摂取量が増加し始める深部体温閾値が見られた。 これらの結果から、肩までの浸水ではなくとも、腰部までの浸水に水循環スーツを併用することで低強度運動中の食道温を低下させることが可能であり、肩までの浸水を行った場合に測定が困難であった循環系パラメーター (動脈血圧や心拍出量など) を測定できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、運動強度の違いがふるえの深部体温閾値および感受性に及ぼす影響を検討することを目的としていたが、従来の実験モデルでは測定できなかった運動時の動脈血圧を測定するため、の実験モデルの作成を行った。我々が先行研究で用いた実験モデルでは、深部体温を低下させるために肩までの浸水を伴うため、測定パラメーターが限られていた。しかしながら、肩までの浸水ではなく、腰部までの浸水を行い、上半身には冷水を流すことで冷却を行うことができる水循環スーツを着用することで、動脈血圧を測定できる実験モデルにおいて、冷却を行った場合に、運動中の深部体温が低下し、ふるえの閾値が見られるかどうかを検討した。その結果、肩までの浸水ではなくとも、腰部までの浸水に水循環スーツを併用することで低強度運動中の食道温を低下させることが可能であることが明らかとなった。この方法を用いることで、肩までの浸水を行った場合に測定が困難であった循環系パラメーター (動脈血圧や心拍出量など) を測定できると考えられる。また、この方法を用いた場合においても、運動中のふるえの深部体温閾値を評価できたことから、次年度以降、運動に関わる生理応答やその調節メカニズムがふるえの特性に及ぼす影響について検討する場合の有効な実験モデルとして活用できることが期待されることから、今後の研究の進展にも期待ができる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画どおり、運動強度の違いがふるえの特性 (深部体温閾値および感受性) に及ぼす影響を検討することを目的として実験を行う。また、今年度開発した実験モデルを用いることで、当初の計画で予定していた筋代謝受容器反射がふるえに及ぼす影響だけではなく、その他の循環応答が体温低下に伴う運動時のふるえ反応に及ぼす影響に関して研究を進めていく予定である。
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