研究課題
プロトン性イオン液体はイオンのみからなり解離可能な水素を持つイオン液体であり、中低温無加湿燃料電池への応用が期待されている。最近イオン伝導性を示すにも関わらず、ほぼ電気的中性分子しか存在しない液体を見出し、これらを擬プロトン性イオン液体pPILと呼び、pPILに特徴的な静的酸解離を伴わないプロトン伝導を超Arrheniusプロトン伝導と呼んでいる。超Arrheniusプロトン伝導はstokes則といった従来の古典イオン伝導論では説明できず、新たな概念の構築が必須である。本研究ではPIL [HB+][A-]の自己解離反応HB+ + A- → B + HA のプロトン交換反応に着目し、直線自由エネルギー関係LFERに基づく超Arrheniusプロトン伝導の概念一般化を目指す。具体的に①プロトン反応に関するLFERおよび②プロトンキャリアの並進・回転運動に関するLFERを明らかにし、新規プロトン伝導液体の探索を行う。今年度、N-メチルイミダゾール-酢酸系pPILについて、アルキル鎖を変化させた系および酸の強さを変化させた系を系統的に調査し、これらの系の①および②の関係性を明らかにした。さらに、Raman分光によるスペシエーションとX線散乱実験とMDシミュレーションによる液体構造解析から陰イオンの共役酸の酸性が強くなるとイオンの一部として伝導するvehicle機構によりイオン伝導が起こることを明らかにした。また、磁場勾配NMRによる自己拡散係数測定を不均一な液体構造を持ち得るpPILに適用し、極性ドメイン内で超Arrheniusプロトン伝導することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
アルキル鎖を変化させた場合のLFERおよび酸の強さを変化させた場合のLFERの関係を明らかにすることができ、新規プロトン伝導液体の探索の道筋を立てることができた。また、新たに同位体置換Raman分光法を開発し、N-メチルイミダゾール-酢酸系pPILに適応し、液体中にイオン種が存在せず、擬プロトン性イオン液体であることを明快に示すことに成功した。
当初の予定通り、N-エチルイミダゾールと種々の酸との等量混合液体に焦点を絞り、①および②を明らかにする。
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