研究実績の概要 |
昨年度、相補的最小二乗法により明らかにした溶液中に存在する種々の化学種の固有Raman散乱因子をC1Im-ジフルオロ酢酸(HDFA)系pPILのRamanスペクトルに適用し、溶液中のイオン種濃度を見積もった。その結果、溶液中にはイオン種がおよそ70 %存在することが明らかになり、プロトン交換反応のΔExG゜を決定することができた。このことから、プロトン交換反応に関するΔExG‡ vs. ΔExG゜、およびプロトン付加体の並進・回転に関するΔTrG‡, ΔRotG‡ vs. ΔExG゜の2種の直線自由エネルギー関係(LFER)に基づくプロトン伝導の概念図の横軸の指標を明らかにすることに成功した。また、プロトン性イオン液体の概念を拡張したプロトン性溶媒和イオン液体についても研究を進めた。グリセリン水酸基をメトキシ基に置換した系について、自己拡散係数測定を行ったところ、水酸基をメトキシ基に置換するにつれて、Liイオンの自己拡散係数は溶媒のそれと同程度、さらに置換すると溶媒の自己拡散係数がLiイオンより速くなった。すなわち、メトキシ基に置換するにつれて、特異的イオン伝導が発現しないことが明らかになった。水酸基をもつ系はアグリゲートや水素結合といった粘性を増加させる液体構造を持つものの、Li+ホッピング伝導を発現する可能性があることを見出した。また、実電池への概念の拡張に向けて、定電流間欠滴定法(GITT)およびオペランドインピーダンス測定による拡散係数の決定取り組み、電場がある状態での並進運動の解明に取り組んだ。
|