研究課題/領域番号 |
17J02362
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山浦 大地 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | ナノテクノロジー / バイオエレクトロニクス / 表面科学 / 半導体微細加工 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は細胞膜を人工的に再現した系を用いた高効率な薬物副作用デバイスの構築である。この系には安定性が低いという欠点があり、本研究では、孔縁部がナノテーパー状になった微細な孔をもつSi基板を脂質膜の保持体にすることでその安定性を向上させてきた。しかし、この系を構築するためには脂質膜を形成した後に膜タンパク質包埋する必要があり、包埋促進のために遠心力を印加しているが、この遠心力によって破れてしまう膜があるなど、安定性は未だ十分とは言えない。そこで今年度は、Siチップのエッジ構造と支持体表面の修飾剤を検討することによるさらなる安定性向上を目指した。 まず、Siチップについては3種類の構造を作製し、これらのチップの安定性を遠心力耐性や溶液交換耐性の観点から比べた結果、先端だけでなく、孔の周辺もテーパー構造になっているものの方が、脂質膜の安定性が高くなっているということが分かった。 次に修飾剤については多数の表面修飾剤を用いて、それぞれの特性を比較・検討した。まず、フラットな基板表面を種々の修飾剤によってそれぞれ修飾し、その基板上に脂質膜を展開してその流動性を測定した。その結果、主にフッ素系の修飾剤で修飾された表面において、脂質膜の流動性が高くなることが分かった。次に、脂質膜の流動性に最も差異があった2つの修飾剤で上述の微細孔を持つSi基板を修飾し、その上に形成した脂質膜の安定性を評価した。その結果、脂質膜の流動性が大きくなる修飾剤を用いることによって、大幅に安定性を向上させられることが分かった。これは、高い流動性によって外力がかかった際に膜が滑ることでそのストレスを軽減し、結果的に膜へのダメージが少なくなるからだと考えられる。今後は上記の知見を活かしつつ、これらを多数並べたアレイ系を作り、高効率な薬物福井作用検査系の構築を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Siチップの形状や、表面修飾技術によって、最大の課題であった脂質膜の安定性について大幅な向上が見られたため、高効率な薬物副作用検査系の構築に向けて大きな弾みがついたと考えられる。また、高効率化のために多くのSiチップを並べたアレイについても着手し始め、その指針がほぼ明らかになったため、全体的に考えて、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、脂質膜の安定性については大幅に改善することができたため、高効率化に向けてアレイ構造の構築・拡大を行っていく。また、人工活動電位の発現についてもチャレンジしていく予定である。アレイ構造を作ることによって、薬物副作用のスクリーニングだけでなく、イオンチャネルを用いた様々な実験のスループットが向上することが考えられるため、活動電位の実験はアレイと並行して行っていくが、アレイ構造の完成によって、活動電位実験のスループットが上がり、こちらの実現可能性も大幅に上がると考えられる。
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備考 |
(2)のタイトルについて、入力できなかったのでこちらに入力します 「山浦大地さん(平野研:D2)が国際会議ISNM2017においてBest Poster Awardを受賞」
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