研究課題/領域番号 |
17J02379
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松平 泉 東北大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | ストレス耐性 / 遺伝・環境相互作用 / 脳 / MRI / 親子関係 / FK506結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
本研究では、健常小児約300名のデータセットを用い、遺伝子の特性と母親の受容的な養育の相互作用が脳の成熟期である小児期,青年期のストレス耐性に関わる脳領域の構造に与える影響を検討する(研究1)。また、若年健常成人約300名を対象に遺伝子の特性と正常範囲の養育の相互作用がストレス耐性に関わる脳領域の構造と機能、および行動レベルでのストレス耐性に与える影響を検討する(研究2)。 <研究1> 対象は5~18歳の健康な日本人小児202名であった。母親の受容的な養育とFK506結合タンパク質遺伝子の特性が脳の灰白質体積に与える交互作用効果を検討した。統計解析の結果、視床の灰白質体積に遺伝子の特性と母親の受容的な養育の有意な交互作用効果が確認された。視床は様々な情報を統合して感情や認知を制御する役割を担い、精神疾患で構造異常が見られる領域である。本研究は、虐待に当たらない範囲の母親の受容性のバリエーションにおいても、FK506結合タンパク質遺伝子の特性によって脳の発達に差が生じることを明らかにした。現在論文を投稿中である。 <研究2> 18~27歳の健常成人約300名のデータ収集を30年5月に完了した。当初はFK506結合タンパク質遺伝子の特性と養育の相互作用が脳活動に与える効果の検討を計画していたが、諸々の都合により、遺伝子解析の実施に遅れが生じた(2019年5月頃完了予定)ため、新たに発案した以下の検討を行った。母親との関係に関する質問紙調査のデータをクラスター分析にかけ、母子の関係性を「愛着+厳格型」「愛着重視型」「愛着不全型」の三種類に分類した。分類されたクラスターによって参加者を群分けし、ストレス耐性に関する質問紙調査の回答から得たスコアを従属変数とした群間比較を行った。その結果、「愛着+厳格型」は「愛着不全型」よりもストレス耐性が有意に高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1は論文の刊行を達成できずにいるが、内容をブラッシュアップできた。研究2は計画を変更したものの興味深い結果を示すことができた。総じて計画通りでこそないものの、順調に研究を発展させられていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
31年度は上記の結果の論文発表を目指す。また、若年健常成人約300名の遺伝子解析が完了し次第、当初予定していた解析を実行し、今年度中の論文化を目標として取り組む。
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