研究課題/領域番号 |
17J02380
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
海老原 周 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 振動外場 / トポロジー / 非平衡 / 創発的対称性 |
研究実績の概要 |
本年度は、時間的・空間的に一様な電磁場を考えるかわりに、時間的に振動する外場を系に印加し、その下での準平衡状態に関して考察した。時間依存外場により系を駆動するとき、系の温度は絶えず上昇を続けるように思われる。しかし駆動周波数が十分に大きい場合、そのような準平衡状態が存在し、駆動周波数のルートに比例した時間間隔だけ継続することが先行研究で明らかにされている。この時、時間依存しない有効Hamiltonianを定義でき、周波数の逆数で級数展開することが可能である。これはMagnus展開と呼ばれる。この展開は多くの場合に漸近級数であり、この挙動は周期外場による系の温度上昇と関連があるとされている。本研究では駆動二準位系の簡単かつ具体的な模型を取り上げ、これに対応する有効Hamiltonianを分析した。高周波領域におけるMagnus展開の妥当性を確認したところで、数値的にその漸近級数的な挙動の確認を試みている。 また、物性系におけるトポロジカルな性質に関しても研究を進めた。アルファ型塩化ジルコニウム (III) は蜂の巣格子上の反強磁性物質であり、スピン軌道相互作用が強い極限において系の対称性が創発的に拡大され、SU(4) 量子スピン軌道液体相を示すことが先行研究で明らかにされている。本研究では、さらに現実的な摂動として蜂の巣格子上に次隣接 (NNN) ホッピング項を導入し局在極限の下での摂動計算を行うことで、SU(4) スピンが非Abelな磁気フラックスと結合した有効模型を得た。NNNホッピングに由来するこの磁気フラックスは創発的SU(4) 対称性を破るため、トポロジカルに非自明なSU(4) スピンテクスチャーとして磁気スキルミオンが生じることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
振動外場駆動系における準平衡状態の挙動に関して理解を深められた。また、物性系における創発的SU(4)スキルミオンに関して解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の通りに、これまでに定式化した縦膨張系におけるカイラル運動論の結果を基にしてカイラル不安定性の研究を進める。それに加え、振動外場下における準平衡状態、および物性系におけるトポロジー現象に関しても研究を進める。また論文の執筆も精力的に行う予定である。
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