研究課題
慢性骨髄性白血病(CML)はフィラデルフィア染色体(Ph)転座を伴う慢性骨髄増殖性腫瘍(MPN)の一つであり、その病源はPh染色体によって再構成されたBCR-ABL1キメラ遺伝子であり、過剰なチロシンキナーゼからのシグナル伝達がCML病態形成に不可欠である。実際、2001年に承認された特異的BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤(imatinib)によって、慢性期のCML患者の治療成績は劇的に改善された。ただし、imatinib治療のみではPh陽性白血病幹細胞は消失しない。近年、エピジェネティック制御遺伝子変異が多くのがんで報告されるとともに、がんはゲノム変異とエピゲノム変異が蓄積した病態として認識されつつあるが、それらが協調して白血病幹細胞を発生・病態進展させる分子基盤は不明のままである。本研究ではTIF1betaのリン酸化と正常造血およびCMLの病態発展における意義を理解し、新たな治療戦略の発展を目指している。解析のために必要なTIF1betaの野生型およびリン酸化変異体をレトロウィルス発現ベクターに組み込みパッケージ細胞を用いたレトロウィルス作製システムに組み込むことで幹細胞にインフェクションすることができるシステムを構築した。野生型およびTIF1betaのコンディショナルノックアウトマウスを作製し、造血幹細胞をセルソーターを用いて分取し、作製したウィルスをインフェクションした。その後致死量放射線照射したマウスに移植し、造血幹細胞機能を現在解析している。また、CMLのモデルマウスを新たに作製しこのマウスとTIF1betaノックアウトマウスを交配した。このマウスを用いてCMLの病態発展におけるTIF1betaの機能及びそのリン酸化の機能解析を行なっている。
2: おおむね順調に進展している
本研究は3年の計画をしており、1年目の時点で既に細胞レベルの解析およびマウスへの移植をスタートしている。当初の計画申請書の通り、表現系の解析およびリン酸化複合体の解析を行なうことが出来ている。既に実験系が構築できているため、実験データを順次解析していけば十分に研究計画を達成できると考えている。
標的遺伝子のライブラリースクリーニングではノックダウンだけではなく、CRISPR/Cas9によるノックアウトライブラリーでのスクリーニングを含めて検討することで、さらに研究計画を進めていきたいと考えている。
すべて 2017
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J Biol Chem
巻: 292 ページ: 1648-1665
doi: 10.1074/jbc.M116.753202