研究課題/領域番号 |
17J02411
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田崎 亮 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / ダスト / 微惑星形成 / ALMA / 輻射輸送計算 |
研究実績の概要 |
本年度の具体的な研究目標はダストの物理的性質(大きさや内部構造)に応じた原始惑星系円盤の観測的性質を理論的に探ることである。そのために本年度では、昨年度に構築したダストの光学特性モデルを利用し、原始惑星系円盤の3次元輻射輸送計算を実行した。特に、近赤外線とミリ・サブミリ波の2種類の観測波長に着目し、それぞれでダストの大きさや内部構造が円盤の観測的性質に与える影響を調査した。各研究成果は次の通りである。
1. 近赤外線波長では、中心星の光を円盤表層のダストが散乱した円盤散乱光が観測できる。従来、サイズの大きな低密度ダストは赤い散乱光を示すことが予想されていた。しかし、本研究によって構築された従来よりも正確な光学特性モデルを用いることで、低密度ダストは青い散乱光を生み出すことを世界で初めて示した。一方で、サイズの大きな高密度ダストは赤い散乱光を生み出すため、散乱光の色の情報はダストの構造を観測的に区別する上で有用であることを指摘した。このように近赤外線波長での円盤散乱光の情報からダストの大きさや構造を判別する方法を確立した。本研究成果は査読付きの国際学術誌において論文を出版済みである。
2. ミリ・サブミリ波における円盤の輻射輸送計算を行った。ダストの大きさや内部構造は光散乱過程に大きく影響する。そこで、ミリ波の散乱によって生じた偏波には、ダストの物理的性質の情報が含まれることが期待できる。そこで、本研究ではダストの内部構造がミリ波散乱偏波に与える影響を調べた。その結果、低密度ダストはその大きさに関わらず散乱効率が非常に悪いことが明らかになった。つまり、ALMA望遠鏡によって観測されているミリ波散乱偏波は比較的高密度なダストによって生じていることを示している。この結果は円盤赤道面においてダストが高密度化していることを示唆している。本研究成果については現在、論文を投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度ではダストの大きさや内部構造が原始惑星系円盤の観測的性質に与える影響を調べる予定であった。まず近赤外線波長における円盤の3次元輻射輸送計算を実行し、ダストの物理的性質と円盤の観測的性質を結びつけることに成功した。この研究成果はすでに論文を出版済みである。しかし、この近赤外線での円盤輻射輸送計算の実行に想定よりも多くの時間を費やした。その原因の一つに、今回扱ったダストが波長と比べて非常に大きく、数値的に扱いにくい光学特性が出現したことが挙げられる。そのため安定に数値計算を実行するために、いくつかの工夫が必要であった。こうして次に行う予定であったミリ・サブミリ波での輻射輸送計算の着手に若干の遅れが生じた。次に、ミリ・サブミリ波での円盤の輻射輸送計算を実行した。着手には若干遅れたものの、当初想定していたよりも非常にシンプルな結果が得られたことで大きく研究が進展した。そのため、計画はおおむね順調に進展していると考えている。なお、ミリ・サブミリ波に関する論文は現在投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
まず今年度の後半に取り組んでいたミリ・サブミリ波での原始惑星系円盤の輻射輸送計算結果を論文にまとめ査読付きの国際学術誌に投稿・出版する。次に、これまでに構築してきたダストの光学特性モデルや輻射輸送モデルを現実の円盤観測(赤外線・ミリ波)に応用することで、実際の円盤ダストの性質を制限する。制限されたダストの性質をもとに、微惑星形成過程を究明する。
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