研究課題/領域番号 |
17J02427
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 知里 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
キーワード | 比較認知科学 / 社会的知性 / 鯨類 / ハンドウイルカ |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、ハンドウイルカを対象に環境の認識と社会的ふるまいを行動観察と実験検証から明らかにし、それを他種と比較することでその進化的要因を検討することである。計画初年度である本年度は、ハンドウイルカを対象とした行動観察と実験を行うとともに、比較対象種であるヒトの実験を行った。 ハンドウイルカとヒト潜水者を対象に、円サイズの弁別課題を実施した。これらの結果を陸上動物と比較し、生息環境が視覚能力に与える影響について検討した。また、ハンドウイルカが自種とそれ以外の刺激をどのように弁別できるかを検討するため、写真を用いた種弁別課題を実施中である。 ハンドウイルカがどのように他者の注意状態を認識し利用できるか、このような認識に他者の性質(競争相手もしくは協力相手)がどのように影響を与えるか検討した。競争相手が存在する条件では注意の種類を様々に変化させ、ハンドウイルカが他者のどのような注意状態を理解できるか検討した。協力相手が存在する条件も同様に実施したが、実験手続きの複雑さがイルカの理解を妨げている可能性が指摘されたため、手続きを改良していく。 ハンドウイルカのコドモを対象とした模倣能力の発達を検討した。訓練されていない特定の技の模倣に、成長・経験や母親の存在がどのように影響を与えるか検討した。さらに、技の模倣や合図の観察などの経験から、どのように技と合図の関係を学習していくかも調べた。 行動観察は、飼育下と野生下の両フィールドで実施した。飼育ハンドウイルカを対象に攻撃的や親和的交渉の発生条件、遊び道具の有無における行動の変化などを記録した。優劣関係などの個体関係、道具に対する交代制や先有権といったルールの存在を検討していく。野生下のミナミハンドウイルカを対象に行なった調査では、水中カメラやドローンを用いて社会行動や群れ状態の撮影に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画初年度で、3つの実験と野外・飼育での行動観察を行うことができた。それぞれ着実にデータが収集でき、解析も行えているため、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
実験、行動観察ともに順調に実施できている。今年度は、実験・観察ともに継続し、さらなるデータを収集することに加え、精力的に結果を取りまとめたい。研究成果を学会で発表し、論文の投稿を目指す。
|