研究課題
本研究の目的は、ニューロテンシン(NT)によるウシの受精および受胎への影響を解明することであり、本年度はNT分泌量もしくはNT受容体発現量とウシの実際の受胎性との関連を明らかにすること、ならびにNTを用いたウシの人工授精技術への応用を検討することを目指した。昨年度までの研究により、体外培養下での受精現象に対する精子へのNT添加の影響ならびに初期胚発生へのNT添加の影響を解析した。その結果、体外受精培地にNTを添加することにより、受精率と胚盤胞の質が向上することが明らかになった。この結果は、雌性生殖器内でのNTの分泌量もしくは精子におけるNTの受容体であるNTRの発現量がウシの受胎性を制御する一要因であり、これらの発現量を人為的に調節することで体外だけでなく生体内の受精率ならびに受胎率も向上させることができることを示唆している。従って、まず、ウシの個体ごとにどの程度NTとNTRの発現量にばらつきがるのかを解析した。各個体におけるNTR1を発現している精子の割合は、各個体の受胎性に関係なく約50%程度でばらつきは少ないといことが明らかとなった。一方、ウシの各個体における子宮ならびに卵管におけるNT発現量の定量をELISA法で試みたが検出することはできなかった。しかしながら、ウエスタンブロティングによりNT前駆体のタンパク質発現量は子宮と比較して卵管の方が高い傾向にあった。以上より、雄側つまり精子のNT受容体発現量ではなく、雌の生殖器内に存在するNT発現量がウシの受胎性を制御している可能性がある。そこで、NTを用いたウシの人工授精技術への応用を検討するために、低受胎性と知られている個体ならびに老齢個体の雌性生殖器内にNTを添加することで受胎性にどのような影響が生じるかについて現在解析中である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Reproduction and Development
巻: Vol.65, No.4 ページ: pp 327-334
10.1262/jrd.2019-008