長期的な飼料穀物の需給のひっ迫が懸念される状況下で、ブロイラーや地鶏などの肉用鶏の生産には、産肉性や飼料効率の向上が求められている。一方、生産現場では、肉用鶏の成長(体重や骨格筋の増加量)に大きな個体差が生じている。肉用鶏の体重や骨格筋量の個体差を最小化し、斉一性を高めることで産肉性と飼料効率の改善が可能となるが、個体差が生じる原因は不明である。 アドレナリンは、副腎から分泌されるホルモンであり、骨格筋では主にβ2アドレナリン受容体(β2-AR)によって作用が伝達され、骨格筋間に現れるアドレナリンの作用の差異はβ2-ARの発現量に依存する。これらの情報から、同じ骨格筋(例えば浅胸筋)においても個体ごとにβ2-ARの発現量が異なれば、アドレナリンに対するβ2-ARシグナルの作用強度が異なる可能性が考えられる。本研究は、肉用鶏の体重・骨格筋量の個体差に対するβ2-A R受容体の関連を明らかにし、鶏肉生産技術へ応用するための基盤情報を得ることを目的とする。 今年度では、前年度までに得られた成果を地鶏に応用するために、鹿児島県産の地鶏である黒さつま鶏を用いて、体重・骨格筋量の個体差に対するβ2-AR遺伝子の関連を調べた。加えて、今年度は、唐辛子に含まれるカプサイシンおよび柑橘類に含まれるシネフリンが骨格筋のタンパク質分解機構に及ぼす影響を調べた。 今年度の結果より、地鶏においても成長の個体差にはタンパク質分解とβ2-AR mRNA発現量が関与することが明らかとなった。本研究の成果が地鶏生産への応用に還元できることが期待される。また、培養筋管細胞においてはタンパク質分解の抑制作用を示す天然物由来の飼料資材をスクリーニングすることができた。しかしながら、初期成長期の増体の遅いヒナの成長を改善へ応用するためには、今後、飼料への添加割合の詳細な検討が必要であると考えられる。
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