研究課題/領域番号 |
17J02581
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
前田 貴星 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 遷移金属錯体 / 超分子ゲル / 液晶 |
研究実績の概要 |
【具体的内容】我々が合成した平面型ニッケル錯体は有機溶媒中では自己集合によるゲル化を起こさないのにも関わらず、液晶中では超分子ゲルを形成することを発見した。さらに溶媒として用いた液晶の配向に応じてニッケル錯体の分子集合様式を制御すること目指し、偏光顕微鏡観測、CDスペクトル、走査型電子顕微鏡、粉末X線回折測定などの種々の測定を用いることでニッケル錯体の分子集合様式を確かに制御することに成功した。 【意義】有機金属錯体とは金属中心周りに有機配位子を有する化合物のことであり、金属が持つ特異な電子状態と有機物が持つ骨格の可変性を組み合わせてこれまで様々な研究がなされてきた。特に有機合成的な観点から分子デザインを自由に設計できる有機金属錯体は触媒、発光素子、磁性素子などの様々な応用の可能性を秘めている。しかしこれまでに研究されてきた有機金属錯体の多くは単分子としての機能を目指したものであり、金属錯体が集合した状態での機能に関してはまさに最先端の研究である。そこで我々は自在に金属錯体の集合様式を制御することができれば、単分子での分子デザインと集合様式のデザインを複合させることにより今までにない新たな機能性材料を創出できるのではないかと考え、金属錯体の集合様式をコントロールすることを目指した。その中で長鎖アルキル基を有するニッケル錯体が液晶の配向に応じて集合様式を自由に制御することが可能であるということを見出した。この方法では特定のニッケル錯体でしか集合様式の制御を達成できなかったが、今後汎用的に用いることができる金属錯体の集合様式制御法を開発するための大きな一歩になる非常に重要な研究である。 また、この研究について国内学会において発表を8件及び国際学会において発表を2件行った。現在、この研究に関する論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニッケル錯体のみならず同じ分子構造を有するパラジウム錯体や白金錯体においても同様に液晶によって分子集合様式を制御できるか試したが、うまく液晶ゲルを作ることができなかった。これは研究を発展させる上では残念な結果ではあるが、液晶中でのみニッケル錯体がゲル化するという現象の機構に関してヒントを与えてくれる結果であり、有機配位子による溶媒との相互作用だけでなく金属のもつ電子軌道も分子集合に対して大きな影響を及ぼすことが明らかになった。これらの結果によってニッケル錯体のゲル化に関して詳細なメカニズムを考察することができたので、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平面型ニッケル錯体は発光特性も磁性も持たないために、集合様式を制御することに成功してもそれによる新規機能性の創出には適していないということが本年度の研究によって明らかになった。今後は発光特性を有する白金錯体の分子集合様式を液晶によって制御することでこれまでにない付加価値を有する発光材料を創出することを目指す。具体的には、白金錯体の有機配位子骨格に液晶と相性のいい部位と光重合を起こす部位を同時に導入することによって、液晶中で光重合を起こし液晶の配向に応じて様々な構造を実現できる金属錯体高分子を創出し、マクロな構造の違いによって生じる発光特性の変化に関して詳細に研究していく。
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