研究課題/領域番号 |
17J02597
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岸 貴之 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | LysoPS / マスト細胞 / GPCR / TRPチャネル |
研究実績の概要 |
マスト細胞はアレルギーや関節リウマチなどに関与し、慢性炎症性疾患の創薬標的として重要である。リゾホスファチジルセリン(LysoPS)はマスト細胞の脱顆粒を促進する生理活性脂質である。この反応はマスト細胞上に発現するLysoPS特異的受容体、LPSxを介することが示唆されている。我々はこれまでにLysoPS構造類似体を約300種類合成し、その中からLPSx特異的アゴニストを見出している。本研究では、LPSxの同定を目指すとともに、LPSxアゴニストを用い、個体レベルでのLPSx機能解明を目的とした。採用1年目では、発現解析から、マスト細胞上に複数のTRPチャネルが発現し、TRPチャネルのブロードな阻害剤の前処置によりLysoPS応答性が低下することを見出した。また、LPSxアゴニストがコンカナバリンA誘発性肝炎を抑制するという結果が得られた。そこで採用2年目では、TRPチャネルを主なLPSxの候補として考え、ほとんど報告例の無いマスト細胞初代培養系におけるsiRNA導入系の構築に取り組んだ。その結果、マスト細胞の生存率を維持した状態で遺伝子のノックダウンが可能な系を確立した。また、既知のLysoPS受容体はGα13共役型受容体であることが知られている。そこで、GPCRとの共役に重要なC末端6アミノ酸をGα13に変換した変異型Gαqタンパク質を種々のGPCRと共発現させ、LysoPS応答性受容体を検証した。その結果、リゾリン脂質であるLPGやLPI受容体として報告されているGPR55がLysoPSに応答することを見出した。さらに、LPSxアゴニストと同様にGPR55リガンドであるLPGがコンカナバリンA誘発性肝炎を抑制することが明らかになった。したがって、GPR55もLPSxの候補の一つとして見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況としては「やや遅れている」。理由として、ラット腹腔マスト細胞の初代培養系、およびエレクトロポレーションによるsiRNA導入系の構築に時間を要したため、採用2年目では各TRPチャネルに対する特異的siRNAの導入に至っていないことがあげられる。「遅れている」を選択しなかった理由として、上記実験系を構築し、来年度にsiRNAスクリーニングを行う準備ができた点があげられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、LPSx候補分子として、初代培養マスト細胞に対してsiRNAスクリーニングを行う予定である。その後、LysoPSに対するマスト細胞応答性低下を示す分子に着目し、アゴニストや阻害剤をマスト細胞に添加した際の脱顆粒応答性やLysoPS拮抗作用を解析する予定である。また、LPSxアゴニストがコンカナバリンA誘発性肝炎を抑制するメカニズムとして、GPR55の寄与をGPR55特異的阻害剤を用いて解析する予定である。また、LPSxアゴニストを投与した際に個体で起こる炎症性サイトカインの変動や標的細胞の解析を行いたい。特にマスト細胞については、マスト細胞欠損マウスを用い、LPSxアゴニストの効果が消失するかどうか検討する予定である。
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