①ヘテロプラスミー個体の解析:ゼブラフィッシュ、キンギョ、ドジョウをドナーとし、未受精卵(排卵卵)から単離したミトコンドリアを、ホストとなるゼブラフィッシュの1細胞期胚に顕微注入することにより、ミトコンドリア移植を行った。ヘテロプラスミー胚の誘起における胚発生能力を比較したところ、3つの移植群間の生残率と正常胚率には有意差が検出されず、ドナー種による胚発生能力の違いは認められなかった。成魚まで生存した移植個体の生殖腺は、無処理のゼブラフィッシュと同様の形態の精巣、卵巣に発達し、受精能をもつ精子および卵を産出した。異科間移植の成魚では、ヒレ(体細胞)および精子(配偶子)からドナーのドジョウ由来mtDNAが検出されなかったことから、孵化仔魚から成魚に至る過程でドナーミトコンドリアが排除された可能性がある。 ②異系統間の核細胞質雑種における配偶子形成の解析:当初の計画では、核細胞質雑種における異種由来の細胞質が配偶子形成に与える影響を、生殖系列キメラを用いた実験手法で解析を行う予定だった。しかし、ドジョウのクローン系統精子とB系統卵を用いて、異なる系統間での核細胞質雑種の成魚を誘起し、配偶子を得ることに成功した。そこで、このクローン核-B系統細胞質雑種雌の卵形成を解析したところ、二倍性の大卵と半数性の小卵を産出した。子孫の遺伝解析から、大卵はクローンと同一の遺伝子型を示したが、小卵ではクローン核の祖先型A系統由来あるいは祖先型B系統由来のアレルをランダムに受け継いでいた。小卵の形成過程では減数分裂前核内分裂が起こらず、A,B両系統の染色体の対合が起こったものと考えられた。さらに小卵では,一部の遺伝子座で不等組換えによるアレルの重複や欠損が高頻度で生じていた。細胞質置換によりクローンドジョウの生殖様式に乱れが生じたことから,細胞質による生殖能力への影響があることが強く示唆された。
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