自然環境下において、反復配列・トランスポゾンのRNA発現やDNA・ヒストンのメチル化などエピジェネティックな動態がどのような動態にあるか調べるため、兵庫県多可郡に存在するハクサンハタザオ (Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)の自然集団を用いた定期的なサンプリング・また実験室での日長・昼夜の温度を操作できるインキュベーターを用いた環境操作実験から得られたデータについて解析を進めた。 その結果、野外における季節の変化に応じてDNAのメチル化レベルが変化する領域の存在が明らかになった。その中には反復配列が含まれ、その反復配列が含まれる遺伝子座のRNA発現とDNAメチル化レベルに逆の季節パターンが見られた。この結果については原著論文として発表した。また、定期的に行われたRNA発現・ヒストン修飾のデータの解析を行ったところ、トランスポゾンごとにそのRNA発現・ヒストン修飾について特徴的な季節動態を示すものがあることが明らかになった。また、これら継時的なエピゲノム動態の背後にある分子機構の詳細に迫るべく開始した、国外の研究機関との共同研究については来年度以降の継続も決定しており、今後の発展が期待できる。 本計画により、これまで基本的にはゲノム内でエピジェネティックな修飾を受け、抑制されていると考えられてきた反復配列・トランスポゾンが、実際に植物が生息する自然環境下では極めてダイナミックな動態を持つことが明らかになった。
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