研究実績の概要 |
本研究では解糖系の律速酵素である、ピルビン酸キナーゼM(PKM)遺伝子の選択的スプライシングを行っているPTBP1と協働で動くスプライサーの同定・機能解析をし、発がん課程でPKM1からPKM2へとスイッチングするメカニズムの解明をすることでがん特異的エネルギー代謝機構であるWarburg効果の成立機構を明らかにすることが目的である。前年度までにPKM遺伝子splicing factorのWarburg効果を介したがん病態への関与を明らかとした。 具体的には、大腸がん細胞においてhnRNPA1やSRSF3はPTBP1と共局在し、PKM遺伝子splicing factor群として働くことと、これらのsplicing factorをノックダウンすると、pAktやpErk、PI3Kなどの増殖関連シグナルの発現抑制に伴う増殖抑制が起こることが明らかとした。今年度はSRSF3の機能解析に特化して更なる検討を行った。その結果siRNA-SRSF3がin vivoにおいても顕著ながん細胞増殖抑制効果を持つことを明らかとした。さらに、RIPアッセイにより得られたsplicing factor binding PKM pre-mRNAをRT-PCRにより増幅することで、スプライシングファクターとPKM mRNAのどの部位が結合しているのかを具体的に解明することに成功した。これらの検討結果はInternational Journal of Molecular Sciences, 2018, 19(10), 3012に報告した。2つ目のテーマである、microRNA-1 (miR-1)によるsplicing factor群の制御に関しては、データベースから予測された通りの結果とはならず、既報のデータしか得られなかったため、これ以上の検討を断念する結果となった。
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