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2017 年度 実績報告書

代替炭素源に基づいたグリオーマ幹細胞の分類及び代謝柔軟性を規定する分子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 17J02715
研究機関神戸大学

研究代表者

南 徳明  神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2019-03-31
キーワードMCT / lactate / metabolism
研究実績の概要

グルコース、 グルタミンをそれぞれ枯渇させた培地を用いてin vitroで基質飢餓環境を再現し、異なる代謝形質をもつ2種類のグリオーマ幹細胞を用いてスフェア形成アッセイを行い、さらに様々な異なる基質を加えることによってスフェアの増大抑制が解除されるかを検証した。その結果、GSC OXPHOSにおいてはグルコース飢餓環境に対してlactateを加えた際に濃度依存的にスフェアの増大抑制が解除されることが判明した。さらに、グルコース飢餓環境におけるGSC GLY、GSC OXPHOSの酸素消費量を測定し、そこにlactateを注入して酸素消費量の変動を確認すると、GSC OXPHOSにおいてはlactateを投与直後から酸素消費量が経時的に有意に上昇することが確認された。このことからGSC OXPHOSはlactateをTCA回路の基質として用いている可能性が示唆された。続いてMCTの発現をウェスタンブロットで確認したところ、MCT2はGSC OXPHOSで優位、MCT4はGSC GLYで優位に発現していることがわかった。さらに、グルコース飢餓環境で24時間培養してそれらの発現を確認すると、GSC OXPHOSにおいてのみMCT2の発現が上昇していることがわかった。また、GSC GLYではLDHA優位、GSC OXPHOSではLDHB優位に発現が上昇していることが確認された。これらの結果からGSC OXPHOSはグルコース飢餓環境においてlactateをMCT2によって細胞内に取り込み、pyruvateに変換してTCA回路の基質と利用できる能力が相対的に高いこと、また、グルコース飢餓環境におかれるとMCT2の発現を上昇させることができ、代替基質であるlactateをより多く取り込むことができるという「代謝柔軟性」を持ち合わせていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初はシングルセルクローニングで樹立した各クローンに対してグルコース、グルタミン、脂肪酸代謝の阻害剤を用いて依存炭素源による仕分けを行うという予定であったが、阻害剤を用いた細胞外フラックスアナライザーによる解析がうまく機能しなかったため計画を変更せざるを得なかった。しかし筆頭研究者はこの問題に柔軟に対応し、基質枯渇培地に対して各種代替炭素源をレスキューするというスフェア形成アッセイによるスクリーニング方法へと速やかに方針を転換し、結果的にはGSC OXPHOSがグルコース枯渇培地においてlactateを代替炭素源として用いることができることを発見した。さらにシーホースフラックスアナライザーを用いた解析ではlactateがTCA回路の基質として用いられていることを示唆する知見が得られ、qPCRやWestern blottingの結果からMCT2がlactateの取り込みに大きく関わっている可能性が示唆された。今後はメタボローム解析やMCTの機能阻害実験などが予定されており、GSC OXPHOSの代替炭素源利用能の分子メカニズムの解明につながることが十分に期待できる。

今後の研究の推進方策

今後はMCT2, MCT4の機能阻害実験、過剰発現実験を行い、in vitroとin vivoにおける表現型の解析を進め、それらの分子がGSCの代謝表現型を担保する分子であるかどうか検証を行う。また、GSC GLY, GSC OXPHOSそれぞれを低グルコース、低グルタミン環境でそれぞれ培養し、その代謝産物を通常の培地で培養したものとメタボローム解析を用いて比較する。さらに、13Cでラベルしたlactatel, glucose, glutamineなどを用いてフラックス解析を行い、代替炭素源が辿る経路を明らかにしていく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Metabolic heterogeneity and plasticity of glioma stem cells in a mouse glioblastoma model.2018

    • 著者名/発表者名
      Shibao Shunsuke、Minami Noriaki、Koike Naoyoshi、Fukui Nobuyuki、Yoshida Kazunari、Saya Hideyuki、Oltea Sampetrean
    • 雑誌名

      Neuro-Oncology

      巻: 20 ページ: 343-354

    • DOI

      10.1093/neuonc/nox170.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dual blockade of the lipid kinase PIP4Ks and mitotic pathways leads to cancer-selective lethality2017

    • 著者名/発表者名
      Kitagawa Mayumi、Liao Pei-Ju、Lee Kyung Hee、Wong Jasmine、Shang See Cheng、Minami Noriaki、Sampetrean Oltea、Saya Hideyuki、Lingyun Dai、Prabhu Nayana、Diam Go Ka、Sobota Radoslaw、Larsson Andreas、Nordlund P?r、McCormick Frank、Ghosh Sujoy、Epstein David M.、Dymock Brian W.、Lee Sang Hyun
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 8 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1038/s41467-017-02287-5

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Organotypic brain explant culture as a drug evaluation system for malignant brain tumors2017

    • 著者名/発表者名
      Minami Noriaki、Maeda Yusuke、Shibao Shunsuke、Arima Yoshimi、Ohka Fumiharu、Kondo Yutaka、Maruyama Koji、Kusuhara Masatoshi、Sasayama Takashi、Kohmura Eiji、Saya Hideyuki、Sampetrean Oltea
    • 雑誌名

      Cancer Medicine

      巻: 6 ページ: 2635~2645

    • DOI

      10.1002/cam4.1174

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2018-12-17  

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