今年度は、Nrf2分解阻害剤であるフマル酸ジメチルの卵巣機能への影響を検討した。 ヒト体外受精の検体から分離した顆粒膜細胞にフマル酸ジメチルを添加し培養し、Nrf2やKeap1、抗酸化物質のDNAやタンパクレベルでの変化を定量的PCR法、ウェ スタンブロット法などによって検討した。また、過酸化水素の添加により酸化ストレスを受けた顆粒膜細胞と、フマル酸ジメチルを添加し細胞を酸化ストレスか ら保護した細胞に対して細胞蛍光免疫染色法を施し、酸化ストレスを可視化した。Nrf2に対するSiRNAを用いた実験でNrf2の機能を減弱させ、酸化ストレスや抗酸 化物質の定量も実施した。 以上の結果より、フマル酸ジメチルはヒト顆粒膜細胞に対し酸化ストレスへの保護作用をもつことが示された。またテロメア長やTERT活性にも着目し、定 量的PCR法、ウェスタンブロット法、卵巣の組織免疫染色法、ELISA法による検討を実施した。 さらに、昨年度は正常マウスならびに加齢マウスにフマル酸ジメチルを経口投与し、コントロール群と比較して卵巣組織切片における酸化ストレスレベルや卵胞 数の検討を開始した。加齢マウスはだいたい1歳齢を目安とし飼育し、フマル酸ジメチルの投与時期による違いや、飼育日数の違いによる卵巣機能の 変化に着目し、定量的PCR法、ウェスタンブロット法、卵巣組織免疫染色法を検討した。その結果、フマル酸ジメチルのマウスへの投与は卵巣の加齢を抑制することが示唆された。
|