研究課題
本研究は白麹菌のクエン酸高生産機構の解明を目的として行った。比較ゲノム解析により、クエン酸合成酵素遺伝子(citA)の周辺に保存された推定クエン酸-オキソグルタル酸交換輸送体遺伝子(yhmA)と推定RNA結合タンパク質遺伝子(nrdA)を見出した。これらがクエン酸高生産機構に関与すると推定し、解析を行った。本年度は前年度に引き続きNrdAの解析を行った。昨年度までに白麹菌のNrdA過剰発現株のクエン酸生産量は野生株の約10%に低下することを明らかにしている。そこでNrdAの過剰発現条件および発現抑制条件のRNA-Seq解析により、過剰発現条件において発現量が低下したクエン酸高生産関連遺伝子を探索した結果、推定細胞質膜局在型クエン酸輸送体遺伝子cexAの転写が約50%に低下しており、NrdAの過剰発現によるクエン酸生産量の低下はcexAの転写量の低下が原因である可能性が示唆された。次にNrdAと二次代謝生産の関連について解析した。モデル糸状菌Aspergillus nidulansとヒト病原菌Aspergillus fumigatus、黄麹菌Aspergillus oryzaeにおいてNrdA過剰発現株を構築し、二次代謝物について解析した結果、NrdAの過剰発現によりA. nidulansにおいてはステリグマトシスチンとペニシリンの生産量が低下し、A. fumigatusにおいてはヘルボール酸、ピリピロペンの生産量が低下した。一方、A. oryzaeにおいてはペニシリン生産量が低下し、コウジ酸生産量が増加した。また全ての菌種において、NrdAの過剰発現は分生子形成を抑制することも明らかとなった。以上の結果から、NrdAはAspergillus属糸状菌において、mRNAの転写抑制により、クエン酸生産や二次代謝生産、形態分化などを幅広く制御する因子であることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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