研究課題/領域番号 |
17J02790
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
米嵜 凌平 九州大学, 大学院薬学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒 / 不斉四置換炭素 / 窒素上無保護 / 求核付加反応 / ケチミン |
研究実績の概要 |
医薬化学や合成化学において非常に重要な化合物であるα位に不斉四置換炭素を有するα-アミン酸類の合成法として窒素上無保護のα-ケチミノエステルに対するインドールやピロールを求核剤とした直接的触媒的不斉Friedel-Craftsアルキル化反応の開発をおこなっており、新規C1対称性を有するキラルリン酸触媒を用いることにより高収率・高エナンチオ選択的に目的物を得ることに成功した。本触媒は新規性が高いため、反応機構解析を目的とした速度論解析、および計算化学を行った。速度論解析の結果、触媒に対して反応次数は1次であり、非線形効果の測定の結果、直線のグラフが得られたため、反応系中において触媒は単量体で作用していることが示唆された。次に計算化学による遷移状態の構造解析の結果、主エナンチオマーである(S)体が生成する遷移状態のおいてC1対称およびC2対称のリン酸の比較を行った結果、C1対称のリン酸の場合にC2対称のものに比べ、求核剤とリン酸の置換基であるアントラセンとの距離が近く、遷移状態が安定化されていることが判明した。遷移状態を安定化する要因として、インドールの2位の水素原子とアントラセン間の相互作用であるCH-π相互作用ではないかと考えている。また、これまでのこれまでの窒素上無保護のケチミンに対する反応として、求電子剤としては非常に反応性の高いα-ケチミノエステルにしか適用できず、またFriedel-Crafts反応全体の制限として、電子豊富な芳香族化合物しか求核剤として用いることができない点で改善の余地を残していた。そこで、反応性の低いケチミンおよび、様々なアリール化を可能にするため、反応の検討を行ったところ、遷移金属触媒および、適切なアリール化剤を使用することにより、より反応性の低い窒素上無保護のケチミンに対してアリール化反応を進行させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規性の高いC1対称のリン酸触媒を用いて、窒素上無保護のα-ケチミノエステルに対するインドールやピロールを求核剤とした直接的触媒的不斉Friedel-Craftsアルキル化反応の速度論的かつ計算化学による反応機構解析に成功し、様々な学会で研究成果を報告しており、近日中に論文投稿を予定している。さらには、より反応性の低い窒素上無保護のケチミンに対して、保護基を有するケチミンを用いた場合においても進行させること難しいアリール化を高収率で進行させることに成功し、かつ反応条件が非常に温和であることが判明している。さらには不斉反応への応用の目処が立っているため当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アリール化反応の不斉化を行って行く予定であり、遷移金属触媒を用いているため、様々な不斉配位子を有する錯体を合成し、適宜検討して行く予定である。また本反応は他研究室とのコラボレーションを予定をしており、共同研究先と協力して、迅速に反応の最適化および基質一般性の拡大につとめていく予定である。
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