遺伝子機能の解析法として外来遺伝子の挿入は有効な手段である。両生類においては、メガヌクレアーゼISce-Iや精子核移植法によるトランスジェネシスが主流である。しかしながら、この方法は挿入されるコピー数やゲノム上の位置を指定できない。加えて、位置効果により外来遺伝子がF1以降 にサイレンシングを受けるとの報告が多数ある。ヒトのAAVS locusやマウスのRosa26への外来遺伝子導入に相当する、「Safe harbor system」が逆遺伝学的ストラテジーを用いた今後の両生類研究において必要不可欠であるが、未だ確立されていない。そこで、外来遺伝子を安定的に発現する個体レベルでのシステムを確立するため、ネッタイツメガエルのセーフハーバー領域へのリコンビナーゼの認識配列の挿入をCRISPR-Cas9を用いて試みた。すでに研究室では、CRISPR-Cas9を用いた標的遺伝子へのレポーター遺伝子の挿入システムを確立しており、この方法を用いてセーフハーバー領域へのレポーター遺伝子のノックインを実施した。 ノックインが成功すれば目にRFPが発現するはずであったが、明確な蛍光を観察することはできなかった。一方、実験個体においてゲノム配列を確認したところ、予定されている配列が検出されたため、ノックイン自体は成功していることが確認できた。 これらの結果から、セーフハーバーと考えられた候補の部位においてもノックインされたレポーター遺伝子の構造によって、発現が抑制されている可能性と、挿入される際にレポーター遺伝子等に予期せぬ変異が導入されている可能性が考えられた。
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