研究課題
本研究では、末梢動脈疾患を模倣した下肢虚血モデルマウスを作製し、金ナノ粒子造影剤を用いたX線CTイメージングで血管構造変化を観察している。昨年度までの研究において、動脈形成過程の際、血管形態パターンを維持しながら血管拡張するということを明らかにした。本年度の結果として、虚血後の動脈形成過程の血管構造変化には、病理切片の免疫染色の結果から、血管内皮細胞の増殖には極性がある可能性を示した。そこで、血管内皮細胞配置がどう配向するか、シミュレーションによって検討した。先行研究より、虚血によって壁せん断応力が増加した血管では、血流方向に血管内皮細胞が配向して血管が拡張するという報告がある。壁せん断応力とは血管壁にかかる血流からの力であり、細い血管に多くの血流量が流れるとき壁せん断応力は大きくなる。血管内皮細胞配置シミュレーションにより、虚血刺激応答初期(虚血処置後1週間程度)では内皮細胞は血流方向に配向していないが、虚血刺激応答後期(虚血処置後4週間程度)では内皮細胞が血流方向に配向するのではないかと推測された。すなわち、血管拡張の際の血管内皮細胞増殖は、血流方向よりも血管周方向に増殖する極性があることを示唆した。また、本研究を遂行するにあたり、金ナノ粒子造影剤を用いたX線CTイメージングを、さらに微細な血管まで可視化する技術に発展させることができた。具体的には、微小流路ファントムを作製し、金ナノ粒子造影剤とマイクロX線CTでどれほど細い管が描出可能かを詳細に調べた。その結果、約30μmの血管まで描出可能であることが示された。よって、この技術が末梢動脈疾患の虚血性血管構造変化解析以外の分析にも適応できる可能性も示唆した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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