本研究の目的は、CrGTの高速相変化機構の解明および不揮発性メモリへの応用である。本年度は、以下の知見を得た。 初めにEXAFSとHAXPESを用いて局所構造の観点からCrGTの相変化機構を調査した。その結果、CrGTは結晶化直後にアモルファス相と局所構造の類似した準安定相が出現し、その後、Crが僅かに移動するだけで安定相に変化することを突き止めた。これは、CrGTの高速相変化が相同士の局所構造類似性によってもたらされていることを示唆している。加えて、相変化による結合状態変化を調査し、結晶CrGTのキャリア生成起源がCr空孔であることも突き止め、準安定相から安定相へと変化する過程でCr空孔が徐々に減少し高抵抗化していることを明らかにした。このようなアモルファス相から安定相へと変化する過程で生じる高抵抗化は価電子端近傍のスペクトルにも明確に反映されることが分かった。アモルファス相では価電子端近傍に位置していたフェルミ準位が、安定相へと変化するにつれてバンドギャップ中に入り込み、最終的にはバンドギャップの殆ど中央付近に位置するため高抵抗になることを明らかにした。 上記に加えてCrGTデバイスの動作特性を調査し、2000回を上回る繰り返し書き換え性能を実証した。また、デバイスを微細化させていくとCrGTは急激な動作エネルギーの低減を示し、実製品レベルまで微細化した際には実用材GSTよりも98%以上低いエネルギーで動作可能であることが分かった。
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