研究実績の概要 |
標的となるタイミングに対して正確に筋力を発揮し身体運動を起こすこと(運動タイミング)は音楽演奏・スポーツなど様々な活動において求められる。正確な運動タイミングを実現するためには、運動を生成する者自身が生成タイミングを正確に知覚すること(自己生成タイミングの知覚)や、感覚フィードバックに対する予測誤差を使って運動タイミングを学習すること(フィードバック誤差学習)が求められる。加えて、道具や疲労などに伴い運動を起こしてから感覚フィードバックが発生するまでに遅延が伴うため、このような遅延に順応し運動タイミングを調節することも求められる。本研究では、時間再生課題における知覚の特性と、聴覚フィードバックの存在の有無および遅延を操作した時の影響を調べることによって、正確な運動タイミングを学習するメカニズムの解明を目指す。 当該年度の取組により以下のことを明らかにした。(1) 自己生成タイミングの知覚は、受動的に提示される場合の知覚と比較して、条件付きで精度低下することがこれまでの検討で分かっていたが、この知覚精度低下は知覚と生成に共通ノイズを仮定した数理モデルで再現できる。(2) 時間再生課題において標的間隔が1秒程度以内である時に限って即時聴覚フィードバックが生成精度向上に寄与する。この成果に関して国際学術誌にて発表した。(3) 聴覚フィードバックの遅延に比例して時間間隔が過大生成され、遅延が200 msを超えた辺りで精度低下する 。加えて、この過大生成傾向は標的間隔に依存し、標的間隔が短い時に(500, 700 msと比較して300 msの時に)遅延による影響が大きい。
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