研究課題
本研究の目的は、力調節機能に関連する神経機序を特定し、その課題依存性を明らかにすることである。本年度においては、経皮的脊髄刺激法という手法を用いて、ヒトの脊髄神経興奮性の指標である脊髄反射を下肢筋群から誘発する実験を行い、脊髄反射の日間における再現性を確認した。脊髄神経興奮性は骨格筋の筋活動の制御を検討する上で重要であり、次年度以降の研究は今年度に習得した経皮的脊髄刺激法を用いて実施する予定である。被験者は健常な成人男性20名であった。刺激電極の陽極は被験者の腹部に、陰極は腰椎1-2番の皮膚上に貼付した。経皮的脊髄刺激には定電圧刺激装置 (DS7A, Digitimer社製) を用いて、被験者の脊髄神経に電気刺激を与えた。電気刺激は50msの間隔を空けて2連発刺激とし、刺激電流は2mAから2mAごとに100mAまで漸増させた。足指筋 (短趾屈筋、短趾伸筋)、下腿筋 (ヒラメ筋、内側腓腹筋、前脛骨筋)、大腿筋 (内側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋) の下肢筋群8筋から表面筋電図を記録して、脊髄反射を計測した。24時間後にも同じ実験を行い、脊髄反射の日間再現性を検討した。再現性の検定には級内相関係数を用いた。なお、刺激電極や表面筋電図の電極位置を皮膚上に印をつけて、同じ位置から脊髄反射を誘発・記録できるようにした。脊髄反射が導出された電気刺激強度の閾値は、中程度あるいは高い再現性が確認された (級内相関係数: ICC = 0.48-0.87)。脊髄反射の動員曲線の最大傾斜は、内側広筋を除いて中程度以上の再現性が確認された (ICC = 0.56-0.92)。以上の結果から、経皮的脊髄刺激を用いた脊髄反射の再現性は中程度以上の再現性が認められることが明らかになった。次年度以降は、脊髄反射測定の“ゴールドスタンダード”であるH反射の結果と比較して再現性を検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、3編の原著論文が国内外の学術雑誌に掲載され、共同研究として実施された研究に関しても2編の原著論文が国外の学術雑誌に掲載された。現在も投稿・改訂中の論文が複数編あるため、当該年度において積極的に研究発表を行ってきた。特別研究員初年度にあたる今年度は、主に研究手法の習得に研究活動の多くの時間を割いた。具体的には、脊髄レベルの興奮性を評価する末梢神経刺激法を用いた実験に取り組んでいた。さらに、共同研究を通して、複数筋から反射を誘発することができる経皮的脊髄刺激法に関する方法論的な研究に取り組んできた。これらの研究手法は次年度以降の研究活動の基盤となるものであり、来年度以降の研究活動は大いに進捗すると期待することができる。
本年度には、主に研究手法の習得に研究活動の多くの時間を割き、脊髄レベルの興奮性を評価する末梢神経刺激法を用いた実験に取り組んでいた。この研究手法は次年度以降の研究活動の基盤となるものであり、来年度以降の研究活動は大いに進捗すると考えられる。また、今後は経頭蓋磁気刺激法を用いて下肢筋群から運動誘発電位を誘発する手法を習得する予定である。この研究手法を用いることにより、筋活動時の脊髄神経回路をより明確化することができると考えている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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