研究課題
本研究の目的は、力調節機能に関連する中枢神経回路を特定し、その課題依存性を明らかにすることである。本年度においては、下肢筋群の随意収縮中において経頭蓋磁気刺激法および経皮的脊髄刺激法という手法を用いて、皮質脊髄路興奮性の指標である運動誘発電位(MEP)と脊髄反射を下肢筋群から誘発する実験を行った。次年度以降の研究は、今年度に取得した実験結果の論文発表を行なう予定である。被験者は、下肢に疾患のない健常な成人男性11名であった。運動課題は、等尺性収縮での足関節伸展・屈曲および膝関節伸展・屈曲とし、各収縮において随意最大収縮の5,10,20%の強度で実施した。経頭蓋磁気刺激では、大脳皮質の下肢筋群の支配領域に磁気刺激を与えて、下肢筋群からMEPを誘発した。経皮的脊髄刺激では、背部に貼付した電極から脊髄の感覚神経に電気刺激を与え、下肢筋群から脊髄反射を誘発した。被検筋は、ヒラメ筋、内側腓腹筋、外側腓腹筋、前脛骨筋、内側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋として、表面筋電図で各筋から筋活動を計測した。安静時および随意収縮時におけるMEPおよび脊髄反射の最大振幅値を算出した。随意収縮時に各筋のMEPと脊髄反射の振幅値は収縮レベルの増大に伴って大きくなったが、足関節背屈中における前脛骨筋の脊髄反射の振幅値は有意な増加を示さなかった。したがって、随意収縮中における下肢筋群の脊髄反射の変調には、筋間差が見られることが明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
当該年度は、主に昨年度に習得した研究手法の応用に多くの時間を割いた。具体的には、皮質脊髄路興奮性を評価する経頭蓋磁気刺激法や下肢の複数筋から脊髄反射を誘発する経皮的脊髄刺激法を用いた実験に取り組んだ。実施した実験の1つは、研究論文の執筆まで当該年度中に達成し、学術雑誌への投稿準備中である。なお、研究計画では随意収縮による下肢筋群の脊髄反射の変調を調べる予定であったが、それに加えて、皮質脊髄路の変調も明らかにすることができた。したがって、当該年度は、当初の計画以上に研究が進展したと評価する。
今後は当該年度に取得した研究結果を論文にまとめ、学術雑誌に投稿する予定である。また、国内外における学会での研究発表も積極的に行っていく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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